韓国のホン・サンス監督作品が2本連続で公開される。7月23日公開の『Night and Day』の舞台はパリ。主人公の男は大麻を吸って検挙されそうになり国外脱出して来たのだ。パリでの宿は、韓国人が共同下宿している14区のアパート。男は近所をぶらつくかタバコを吸うか、他にすることがない。街でみかけた若い画学生が気になる。この40歳くらいの男、本当に普通の何の特徴もない男なのであるが、なんだかんだとうだうだといつの間にか例の若い画学生と関係を持つ。国の妻からは頻繁に電話がかかってくる。一方で、昔の女にばったり出くわす。この男、女好きなのである。女にだらしないともいえる。他に女がいることがバレそうになると、すらっと嘘をつく。パリの韓国人社会を背景に描かれるこの作品はジャン・ユスタッシュの『ママと娼婦』を彷彿とさせる。
8月20日公開の『浜辺の女』、こちらは韓国の春先のひとけのない海岸が舞台。主人公は映画監督。友人とその彼女と3人で1泊のドライブの旅に来た。この映画監督も女たらし。友人の彼女をものにした上に、その舌の根も乾かないうちに(?)他の女と関係をもち、三角関係の狭間に立たされるが、のらりくらりとやり過ごす…。ホン・サンスはフランスで人気が高い。いつも男と女の話を、それもつい女に手をだしてしまう男の行動を「しょうがないなー」という観点で描くので、身に覚えのある人は、我が意を得たりとうれしくなるのではないか。主人公は監督の分身と思われる人物で、自己申告的な感じもする。映画を通して世の女性に「ごめんなさい」と言っているようでもあり、その何かうじうじっとしたタッチが、微笑ましくもあり、自嘲的でもあり「まあしょうがない、ゆるしてやるかぁ」という気にさせる。(吉)
