幻想的な場所を創り出す。 “Leonora Carrington”

 神秘主義にアニミスム、魔術、シュルレアリスム、ファンタジーや神話の要素が混じった作風のレオノーラ・カリントン(1917-)は、イングランド北部の富裕な事業家の家庭に生まれた。母、祖母、乳母からケルト神話やルイス・キャロルの物語を語り聞かせられ、幼いころから現実を超えた見えない世界に惹かれていた。それが、その後の作家活動の源泉をなしている。シュルレアリスムの画家とされているが、そうした美術史的な分類に関係なく、ファンタジー文学が好きな人には、場を共有することができる稀有な作家だ。
 21歳のとき出会ったマックス・エルンストとの悲恋が、カリントンを伝説的な画家にした。ロンドンで知り会い、互いに一目惚れした二人は、南仏の田舎で共同生活を送るが、戦争中の特異な状況のために、別れを余儀なくさせられる。
 劇的な人生を送った芸術家は、作品よりも人生の面白さで評価されることが多い。カリントンもそうなりがちだが、作家としての成熟度と独自性が、有無を言わせず見る者を圧倒し、エルンストとの関係など、どうでもよくなってくる。
 『Bird Bath』では、キリスト教の聖職者の姿をした男と頭が鳥の人物が、卵を半分に切った形の風呂に、とぼけた顔の鳥を入れている。背景の建物の屋根には、風呂に入っている鳥と同じ形の鳥が切り抜かれている。黒服の2人の人物は、切り抜いた鳥を風呂に入れて生きたものに変える魔術師のようだ。
 『Le Bon Roi Dagobert』の白髪の王の頭には、鹿の角が生えている。フランク王国メロヴィング朝の3人の王ダゴベールのうち、鹿にまつわる話が残っているダゴベール1世からインスピレーションを得たのだろう。ライ病にかかって、妻と巡礼をしているうちに奇跡的に治ったという、不思議話に事欠かない王だ。王のいる建物と背景は、東洋のようでも北欧のようでもある。西洋に限らず、多くの文化を研究したカリントンの教養が、どこにもない幻想的な場所を創り出している。
 それにしても、今回の展覧会は、絵、デッサン、彫刻で55点と数が少なすぎる。もっと見たい、と欲求不満を抱えて、会場を出た。(羽)

Bird Bath 1978
Coll.Galéria El Estudio, Mexico – Courtesy Frey Norris gallery

Maison de l’Amérique Latine : 217 bd Saint-Germain 7e
7月18日迄。日休。


●葛飾北斎 (1760-1849))
死後西洋芸術に多大な影響を与えた北斎の回顧展。『富岳三十六景』などの風景画や花鳥画他、数多くの作品を展示。
8/4迄(火休)。
Musée Guimet : 6 place d’I始a 16e

●Aquarelle : atelier et plein-air
© Musée d’Orsay
19世紀半ばにイギリスから紹介された水彩技法は、油彩と違い、素早く瞬間的な印象が描けることから、自由を求める若い画家たちを中心に急速に広まった。ブーダン、ヨンキント、セザンヌなどの作品。9/7迄(月休)。
オルセー美術館

●Bridget RILEY (1931-)
携帯や色彩が視覚に与える効果を、理論的だが遊び心いっぱいに追求する。フランスではあまり知られていないブリジット・ライリーの作品を集める。9/14迄(月休)。
パリ市現代美術館 :
11 av. du Président-Wilson 16e

●Pascal CLIBIER (1953-)
造園家パスカル・クリビエの都市と自然を結ぶ庭園。クリビエ自身が撮影した写真展。9/28迄(月休)。
Espace Electra : 6 rue Récamier 7e

●Georges ROUAULT (1871-1958)
没後50年を記念するジョルジュ・ルオーの作品展。1905年から1914年にかけての初期の作品を展示。
10/13迄(火休)。
ポンピドゥ・センター

●César (1921-1998)
没後10年、彫刻家セザールの作品の中から、友人でもあった建築家ジャン・ヌーヴェルがセレクト。
7/8~10/26(月休)。
カルチエ財団現代美術館 : 261 bd Raspail 14e

 


 

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