4月28日、リヨン郊外の中学校の校庭で15歳の少年が3人の友人を包丁で突き刺す傷害事件を起こしているが、この種の校内暴力は生徒だけでなく教師にも被害が及んでいる。街での強奪、暴行、破壊など軽犯罪の低年齢化が進むなかでサルコジ大統領が内相時代から頭を悩ましているのは、とくに13歳未満の非行の増加だ。
フランスの少年法は1945年令に基づき、1963年以来31回も手を加えられてきている。が、「13歳未満は処罰できない」という条文を改正できないジレンマのなかでラシダ・ダチ法相は4月15日、1945年令改革委員会を設置、「刑事責任を科せる最低年齢を設定すべき」と同委員会に検討させる意向だ。また2007年制定の刑法は16~18歳の累犯者には責任免減を認めず成人と同じ刑事処分を科し、未成年者犯罪の厳罰化に踏み切った。ダチ法相はこれを初犯にも適用することを考えているようだ。
欧州諸国の中でギリシャは刑事責任を科す最低年齢を7歳とし、英国は10歳、スウェーデン、オランダ、イタリアは12歳、ドイツ、ロシアは14歳。フランスは他の国にならい法定最低年齢を設定したいところだが、国連児童憲章は最低年齢を12歳とし、ユニセフも12歳が最低年齢の限界だと警告している。
この10年間で未成年犯罪者は1.5倍増、全軽犯罪者の18%を占め年間約8万人に刑事判決が下っている (現在750人が服役中)。 昨年パリの未成年者担当検察局が扱った軽犯罪は約1万3千件、そして13~15歳の非行少年約5600人に関しては教育的扶助を命じている。
2003-04年、ある拘置所の未成年者区画で過ごした人類学者ルケーヌ氏はリベラシオン紙で「拘置所は今や、シテ(郊外団地)の非行少年の溜まり場になっていて新たな仲間関係ができるくらいで、犯罪への反省にはむすびつかない」と悲観的な意見を述べている。1945年令は「未成年犯罪者は同時に精神的危機にある」とし、裁判官には判決と同時に教育的扶助を命じる。ダチ法相は裁判官の業務削減のためこの二重の任務を分離し、教育的扶助の地方自治体への移行も考えているようで、司法官や更正指導員の間で危惧の声が上がっている。
遠地にある更正施設は非行に陥った少年少女に第二のチャンスを与えるため、軍隊生活に近い規律の中で6カ月から1年の再教育と職業訓練を課している。このチャンスを活かせる少年たちだけが社会に復帰できるわけだ。
また07年法は、危険性の高い重罪犯には懲役という応報とは別に、「犯される恐れのある犯罪を防ぐため」に服役後も拘置を延長できる「保安処分」を認めている。法相は「人権とは、犯罪者の権利よりも被害者の権利を優先する」とし、社会的防御の姿勢を強めている。(君)