安楽死是非論が再燃。


 7年前から鼻腔から額にかけてできた進行性悪性腫瘍と闘い続けた元教師シャンタル・セビルさん(52)。手術は不可能で顔面が極度に変形し、モルヒネに対しアレルギーがあるため激痛と出血が絶えず全盲に。2月以来、彼女は尊厳死権協会とともにメディアに訴え、ディジョン大審裁判所に医師の処方による薬剤での積極的尊厳死の許可を申請したが、3月17日、裁判所は「医師は故意に死なせる権利をもたない」とし彼女の願いを却下した。サルコジ大統領にも手紙を書き、19日、彼女の主治医がエリゼ宮に大統領他、医療顧問、専門医に事情説明に。その夜7時半頃、セビルさんは寝室で死亡していた。自然死ではなく薬物自殺と判断された。解剖の結果、彼女が飲んだ薬剤はバルビツール酸の一種で、フランス国内では非売だがスイスでは手に入るパントバルビタールと判明。
 2003年、自動車事故で全身付随となったアンベール青年もシラク前大統領に「死ぬ権利を要求します」 と手紙を書いている。母親は息子の願いを叶えるためバルビツール酸を投入、医師が人工呼吸器を外して死に至らせた。二人は殺人容疑に問われたが、後日無罪放免となった。
 この事件が話題を呼び2005年、レオネッティ法が成立した。同法は、末期患者や苦痛の限界にある不治の患者が死を望んだ場合、昏睡状態にし人工的延命装置を停止し、死を早める消極的安楽死を認めている。が、同法は医療界や一般にはまだ浸透しておらず、 一般的に病院は末期患者のケアを重視している。
 3人の子供をもつセビルさんは昏睡状態にされて病院で死ぬことを拒み、医師の助けを得、家族に囲まれて生を終えることを願っていた。従ってレオネッティ法が認める消極的安楽死には適合しなかった。クシュネール外相・元保健相などは、彼女のケースを特別視し、同法に特別条項を設けるべきだと提案する。
 現在ベルギーやオランダでは2、3人の医師と精神科医の診断を経たうえでの積極的安楽死が認められており、スイスでは病院内で薬剤による「自殺補助」が認められている。
 20年前からあるフランスの尊厳死権協会にはすでに4万人の会員がいる。フランスで中絶解禁法が成立する以前の60~70年代初期にどれほどの女性がオランダや英国、スイスまで中絶しに行ったことか。今日、隣国まで「死ぬ権利」を求めに行く人が出てきているのだ。セビルさんもベルギーに行こうと思えばそれもできたのだが、彼女は死をもって積極的尊厳死の権利を国に訴えたといえる。
 1974年中絶解禁法、1981年死刑廃止法に次ぐ重大問題として、フランスでの安楽死是非論を追っていきたい。(君)