欧州統合市場での自由化協定に従い、7月1日からフランスでも電力・ガスの発電・供給が自由化され、1946年以来、国内の独占市場に君臨してきたフランス電力公社EDFとガス公社GDFがついに自由競争市場に直面。かといって原子力発電で全国の供給量の80%を掌握しているEDFに、価格競争で小売り企業がどこまで対抗できるかというと、論理的には自由化でもまだまだ非現実な段階にあるよう。 というのは、すでに数年前から工場やホテル、自治体などの業務用に供給している小売り企業として、POWEO(ネットによる証券仲買業でボロ儲けし02年から電力・ガスを供給)やエレクトラベル社(水事業最大手仏スエズ社が05年に買収したベルギーの元発電大手)、 水力発電部門をもつダイレクト・エネルギー社他、参入を目指す企業のほとんどはEDFから電力を卸値で買い取り、送電コストも払って消費者に供給する仕組みなので、自由化のメリットはあまり期待できない。その中で、再生可能エネルギー(太陽・風力・水力他)発電を目指しているのが、環境保護団体グリーンピースが支援するEnercoopだが、EDFより30~40%高になるのは避けられない。 では自由化によって料金が下がるのだろうか。ガスの卸値は原油価格と同様に変動するが、欧州最大数の原発をもつEDFは世界一安いといわれる統制価格を維持し、値上げしても2010年まではインフレ率に合わせるそう。EU委員会に言わせると、EDF料金は安過ぎて小売り企業の参入を阻み自由競争がなり立たないとして市場価格に足並みを揃えるべきと、EDFに値上げを要請するという矛盾した状況に。 ちなみに8年前に自由化された英国では、現在26社が電力・ガス市場で競い合い、消費者は月毎に供給会社を替えられ、苛烈な競争価格にあやかっているかというと、03年以来ガス料金は70%増、電力は52%増と急上昇中。10年前に自由化されたドイツでも、02年以来電力の値上がりが目立ち、26%増だという。 フランスの消費者は自由に電力会社を選べるのかというと、そう簡単ではない。つまり、いったんEDFから他の企業に乗り換えたあと、EDFに戻りたくてもそれができない仕組みになっている。例えば、家主または前借家人がEDFから他社に切り替えてあると、もうそれを変更できないわけだ。この仕組みは、完全な自由競争を促進させるためとも、EDFの従来の顧客が他社に移らないようにするためとも見られている。地方自治体連盟は、この融通のきかない契約法に抗議しているが。そんな中で小売り企業は、年内に全国2500万所帯のうち30万所帯の勧誘を目指しているよう。(君) |