乱雑に散らかった感じが魅力になってしまう。 “Boxes”

 ジェーン・バーキンはお好き? 永遠に抜けない英語訛の仏語での止まらないお喋り、こちらが面食らうほどあけすけに私生活を語り、いつも変わらぬパンツ&Vネックのセーターor白シャツ姿はカジュアルな着こなしの極意、そして年季の入ったバーキン・バックの中に溢れかえる私物、道行く人が声をかければ気さくに応えるし、やっぱり親しみを感じずにはいられない存在だ。独特のハスキーな囁き声でゲンズブールを下手上手に歌い一つの歌唱パターンを確立した存在でもある。そんな彼女が監督・主演した『Boxes 段ボール』は、彼女そのものの映画である。題名の由来は「私の人生は引っ越してばかり、常に段ボールと一緒」ということらしい。
 三人のパートナー(劇中ではジョン・ハート、チェッキー・カリヨ、モーリス・ベニシュー演じる、実生活ではジョン・バリー、セルジュ・ゲンズブール、ジャック・ドワイヨン)との間に出来た三人の娘(劇中では、ナターシャ・レニエ、ルー・ドワイヨン、アデル・エキザルショプール演じる、実生活ではケイト・バリー、シャルロット・ゲンズブール、ルー・ドワイヨン)との親子の関係が描かれる。娘は母の期待に、母は娘の期待にちゃんと応えてきたのか? 一方、自身は両親(ミシェル・ピコリとジェラルディン・チャプリン)にとってどんな存在だったのだろうか? 全員が自問自答するお喋りな映画。故人も生きてる人も彼女の前に現れては消え、時を超えて存在する映画。乱雑にとり散らかった感じが魅力になってしまう映画。そして最後は新しい恋の予感で終わる。先月登場のマリアンヌ・フェイスフルにつづき、今月も70年代を闊歩し今60歳を超えたイギリス女性の登場となった。そして人生はつづく…。(吉)

Catherine Breillat (1948-)

 無邪気な少女のころを想像するのがちょっと難しい人だ。16歳でプチブル的な家庭環境に唾を吐くように家出をし、翌年には小説家デビューを果たしてしまう早熟ぶり。この処女作『L’homme facile』は過激な内容のため18歳未満禁止の処分を受けた。1976年にプロデューサーのすすめで自作の小説を映画化した『本当に若い娘』で監督デビューを果たす。これを機に表現手段をペンからカメラに持ちかえる。代表作に『堕ちてゆく女』、『ロマンスX』、『処女』、『Sex is comedy』、『Anatomie de l’enfer』など。
 「一本の映画のためにどれだけ人に憎まれるかを知るのは怖い。私はテロリストではない」。女性らが心に秘める欲望の数々をスクリーンに生々しく叩き付ける彼女への風当たりは実際激しいものがある。だが、「危険や挑戦なき映画に成功はありえない」と妥協は許さず、映像表現の限界点に触れるのも辞さないブレイヤ作品には、いつだって本気だけが全編に張りつめているのだ。
 2004年脳卒中に倒れたが、闘病生活を経てようやく新作『Une vieille maitresse』が完成。カンヌ映画祭コンペ部門への出品を決めた本作で「性の反逆児」のレッテルを返上。映像作家として先入観なしに彼女の真価が問われるのはこれからだ。(瑞)


photo : Guillaume Lhavit d’Hautefort

●Une vieille maitresse
 過激な異端児カトリーヌ・ブレイヤ監督初のコスチューム作品。17世紀パリ。公爵夫人は清純な孫娘エルマン・ガルドを美青年リノ・ド・マリニと結婚させるのだが、リノには数年来離れられない間柄の愛人がいるのだった。
 今までブレイヤ監督作品に関しては挑発的な性描写もさることながら、フェミニスト監督が陥りやすい頭でっかちで図式的な世界観が鼻につき苦手だったのだが、本作でそんな印象は一掃された。初めて他者の小説の映画化をしたことが、結果的に物語に身を委ねるような肩肘張らない演出を可能にしたのではないか。監督として新たな再出発を告げる意外な秀作。(瑞)


 

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