France 3で月曜から金曜までの23時過ぎに放映されている〈Ce soir ou jamais〉というトークショー番組が群を抜いて面白い。スターやマスコミ界のおなじみの顔を排したゲストの選び方が鋭い。政治・社会問題、文化、現代風俗などの分野から一つのテーマに絞ってじっくりと討論が展開される。生中継ならでは緊張感やハプニングがある。そして従来のトークショー番組と違って映画の新作やCD などのプロモーションがないのが清々しい(自分の本が紹介されなくて怒って座を立った評論家もいる!)。好奇心旺盛、豊かな表情と生き生きとした視線でこの番組のかじをとっているのが、司会のフレデリック・タデイ(46)だ。「僕はヒエラルキー的な関係で押しつけられたことをやるのが大嫌いだ」という自由な雰囲気が番組に溢れている。 パリで銀行員の息子として生まれるが、父は事業に手を出して破産。「何にも遺産はなかったけれど、楽しい家庭だった」。それを苦にせず、20代から30代にかけては「人生のツーリスト」と、勉学も仕事もせず、知的好奇心にまかせて、コンサート、美術館、ドストエフスキーやセリーヌといった文学書の中で時間を過ごす。最終的にジャーナリストの道を選び、Canal+やParis Première などのテレビ局で頭角を現す。「教養がありすぎてテレビには不向き」とも評されもしたが、昨年の9月からは〈Ce soir ou jamais〉の司会者に抜擢される。2005年からはラジオ局Europe 1 でも活躍している。 女優のクレール・ヌブー、彼らの一人息子とパリ郊外に住んでいる。「テレビ番組の司会者になって、車や妻を替えないのは、僕くらいしかいない」(真) |