独仏のエゴに振り回されるエアバス再建計画。

 エアバス社は、ボーイング社を追い越すために開発した超大型旅客機A380の昨年来の納期遅滞で注文取消しや遅配賠償金など5年間で48億ユーロの損失、A350XWBの開発費超過分100億ユーロと、親会社EADS(欧州航空防衛宇宙社)の土台をも揺るがすほどの財政危機に直面。そのうえ販売はドル建て、生産費はユーロ建てのため近年のドル安でA380だけで発売以来20%の損失。
 2月28日、仏独共同経営のEADS仏側社長兼エアバス社長ガロワ氏が衝撃的なエアバス再建計画「パワー8」を発表。仏独英スペイン4カ国内16カ所に工場を持つエアバス社は5万5千人(下請け企業1500社合わせ計13万2千人)雇用しているが、同計画は4年間で仏4300人、独3700人、英1600人、スペイン400人、 計
1万人削減(半数は下請け従業員)。さらに独2工場と仏1工場を売却、他3工場を下請け企業に譲渡、年10億ユーロの経費節減など。
 1999年、仏アエロスパシアル社(ラガルデール社長7.5%)と独ダイムラー・クライスラーの子会社DASA(15%)合併によるEADS設立時に、ジョスパン元仏首相は英国の参入を阻むためか仏国有株15%を確保。が、独への政治的配慮で仏は発言権を放棄。雇用人数・資産所有率では仏60%、独40%なのに仏独両頭体制で両国のエゴが張り合い、単独総裁制にする案ではどちらが頂点に立つかで衝突し合ってきた。A380も各機体部分の生産が4カ国に分散し、生産時間のズレや部品規格の調整などで生産遅滞が発生。
 ライバルのボーイング社は米防衛庁と航空宇宙局NASAがバックについているが、9年前の財政危機の際、社員の半数を削減し、生産量の80%を下請けに回し危機を乗り越えた。75%を直系工場で生産しているエアバス社も再建計画「パワー8」で、現在の下請けの生産量25%を50%に増やす方針だ。
 大統領選戦真っ只中、エアバス問題は候補らにとって踏絵のよう。与党UMPサルコジ候補は「EADSには主導株主が必要で、エネルギー産業アルストム社の危機に際し国有株を20%に引き上げたように国が増資すべき」と説く。中道派UDFバイルー候補は「国家は責任をとるべき」と発言。ロワイヤル社会党候補は、独側(銀行・数州が7.5%所有)のように仏側も地域を参入させるべきと表明。この提案を受けて8地域が計2億ユーロ分の株の買収を申し出たが、「全体の0.06%でしかない」とサルコジ候補は冷笑する。
 米製品に対抗できる唯一のEU製品の目玉、エアバスの将来は仏独のナショナリズムを越えての協調態勢にかかっているようだ。(君)