コメディアンのジャメル、サッカー選手のリリアム・テュラム、ラップ歌手のジョイ・スターなどとともに、一昨年秋、郊外で多数の車に放火して反乱を起こした若者たちに向けて、自分たちの要求を聞いてもらえるためには、選挙人リストに登録して投票することが何よりも大切だ、と訴えかけた一人が、やはりラップ畑の女性歌手ディアムス(26)。
1980年、キプロス島の首都ニコシアで生まれる。母はフランス人、父はキプロス人。3歳の時に、両親が離婚し母に連れられてフランスにやって来て、パリ郊外に住む。12歳の誕生日に母親がプレゼントしてくれたDr. Dreのアルバムでラップ洗礼。その後ラップグループNTMの大ファンになり、14歳の時にグループ結成、ディアムス(ダイアモンド)という名前で初舞台。初アルバムは当たらなかったが、2003年の2枚目のアルバム『Brut de femme』でブレイクした。
昨年出た『Dans ma bulle』では、極右の国民戦線党ルペン党首の娘マリーヌを叩いたり(意地悪くしたい、意地悪くしたいのは、マリーヌ、あなた。決して友だちにはなれないよ。だって私はよそからやって来たフランス人…私たちを見てごらん。きれいでしょ)、サルコジ内相をファシストと決めつけたり、あるいは「ポンポンポン」という明るい調子で、セックスしか考えないダメ男たちに宣戦布告したりして、60万枚以上の大ヒット! 歌手としての収入も昨年はジョニー・アリデー、ミレーヌ・ファルメールに次ぐというからすごい。3月30日と31日はパリのゼニットで公演。郊外の若者たちが、前列を埋め尽くし、彼女に合わせて「私だけのフランスは、こんな恥ずかしくなるようなフランスではない。私だけのフランスは、嘘の塊の中には生きていない。私だけのフランスは、ハートと怒りを持って、影ではなく光の中で生きている」と合唱するに違いない。(真)