ニコラ・ユロ(51)といえば、TF1で放映される人気番組 “Ushuaia” のプロデューサーで、気球に乗ってアフリカのサバンナ上空を飛んだり、サンゴ礁に潜ったりする姿でおなじみ。「自腹を切らずに贅沢なバカンスを過ごしている」という陰口もあるが、年4回のこの自然観察番組で36万ユーロの収入があるというから、このやっかみも無理はない?
ニコラ・ユロは1955年リール市で生まれる。父親はベネズエラまで金探しに出かけた冒険家だったが、ユロが15歳の時に病死。大学を中退したユロは、南仏の海岸で、清掃係、ウェイター、ヨットの講師などの職に就き、休日にはホンダの450ccを乗り回す。その後通信社Sipaに入社し、カメラマンとしてグアテマラ、ローデシア(現ジンバブエ)、南アフリカなどに派遣される。ラジオ出演をきっかけにマスコミに認められ、1987年から “Ushuaia” を担当することになる。その翌年には、当時パリ市長だったシラク現大統領と出会って意気投合。何度か環境相のポストをすすめられたりもするが、マスコミで思ったままをいい続けたい、と断っている。
そのユロが大統領選を今春に控えた政界を揺るがしている。というのも、マスコミを通じてフランス人一般に広まっている環境保護の立て役者というイメージを盾に、各党の大統領選候補者に、「持続可能な開発を担当する副首相を任命する/炭素ガス発生を1/4にするための税を設ける/農業の補助金を考え直す」などをうたった環境保護協定に署名することを迫っているからだ。満足がいくように署名が集まらない場合は自ら立候補すると表明している。その場合ユロは10%得票という結果が世論調査で出ているので、緑の党を初め各党は戦々恐々。ロワイヤル、サルコジ両候補も署名することを確約している。「信号はすべて赤! 経済にとってよいものは環境にはよくない。市場至上主義は機能しない。地球は限界にきている。開発途上国の需要に応えるためには地球が四つは必要だ」(真)