ジャン=ピエール・ダルッサンは、『マルセイユの恋』や『幼なじみ』など、ロベール・ゲディギャン監督の一連の作品、セドリック・クラピッシュの『百貨店大百科』や『家族の気分』などで「気はいいけれど冴えない中年男」という役を演じている。そのダルッサンの初監督作品が、意外にもとてもいい。原作はエマニュエル・ボーヴの小説で、その舞台(1935)を現代に移し、家族や階級を捨てパリの庶民街で文筆業に専念しようとする男(ダルッサン自身)が描かれる。上流階級(家族)、庶民階級(隣人たち)のどちらにも属さず、話の中心にいながら部外者であり続ける聖人あるいは仙人のような主人公に、魅了されていく。(海)
Share On
