Montargis
「ガティネのヴェニス」と呼ばれるモンタルジの町に出かけてみた。リヨン駅から普通列車でも1時間半、急行なら1時間でこの小さな町に着く。日曜の朝、普通列車で行くと、ハイカーたちがたくさん乗ってくる。フォンテーヌブローの手前の森では、駅もないのに電車が止まり20人ほどのハイカーたちが線路におりる。日曜だけの特別サービスらしい。何とものどかな鉄道の旅。
やがて終点モンタルジに着いてサイクリング姿で自転車をたずさえた年配の一群と一緒に改札を出る。なるほどこの距離ならサイクリングにも恰好の場所だと納得。旧市街までゆっくり歩いて15分くらい。観光案内所はお休みなので町の外れの小さなガティネ博物館へ。周囲の森は泥炭層でおおわれた低湿地で、旧石器時代やローマ時代からさかんに利用されていたことが博物史の展示で解説されている。
水流が豊かな低湿地だったためか、町の近くを流れるセーヌの支流のロアン川から引いた運河と、さらにそこから枝分かれした小さな水路が、町を縦横に走っている。運河の傍らでおじさんが何か釣り上げている。獲物のなまずの大きな口から針を外す手伝いをする。「2時間で20匹は釣れるよ、今晩はこれのフライ、小骨が少なくてうまい」。自転車の荷台の魚籠(びく)の中には25cmほどのが3尾。閘門(こうもん)で仕切られた運河の水は深緑色に濁って見えるが、流れの速い水路は透明で底が見える。家々の裏にはかつては小船の乗り場か洗濯場か、張り出しがこしらえてある。
午後は町の南にある小さなクロジエ湖を一周して、革命後の時代に活動し最近再評価された画家ジロデの作品を収めたジロデ美術館を見る。その後、日当たりのいいカフェで流れの水音を聞きながらコーヒーとビスケット、小さなコップに氷を入れてよく冷えた水を喉に流し込む至福の時で、半日の旅を仕上げる。
夏の気配とともに水辺が懐かしくなった時にはいい日帰りの旅になる。ただし、日曜日はレストランもほとんどしまるのでご注意を。(公)
裏庭の代わりに水路がある。
広場のカフェ。
奥の塀の下と建物の裏は水路。随所に段差があって水音が聞こえる。
運河の合流点。
Montargis
●リヨン駅から急行で約1時間。
往復35.8euro。
●観光局
10 rue Renée de France 02.3898.0087
●Musée du Gatinais
7 rue du Chateau