干燻製の魚が入った、カレー風味のごはん。 Kedgeree

 タラ科の魚をおろして燻製にしたアドックhaddockが、美しいオレンジ色の身を見せながら魚屋に並んでいる。1枚がだいたい250グラムから300グラムくらいの重さになるだろう。2枚買ってきて、ケッジェリーと呼ばれるカレー風味のごはんを作ってみよう。ビクトリア朝時代からイギリス人が朝食として好んだものだというが、きっとイギリスの植民地だったインドから渡ってきたドライカレーがケッジェリーに変身したのだろう。イギリス人の友だちが作るものは、カレーといってもあまり辛くないので、ちょっとがっかりする。といっても、辛すぎるとアドックの繊細なうま味が飛んでしまう。このへんの加減がむずかしいが、何度か作ればわかってくるはずだ。
 お米を洗ってザルにあけ、水気をしっかり切っておく。アドック2枚は底広の鍋に重ならないように並べ、それがすっかりかぶるように熱湯を注ぎ、弱火にかける。沸騰させないようにしながら10分ほど火を通したら取り出す。皮をむき、大きめにほぐしながら残っている骨を丁寧にとりのぞく。ゆでエビは殻をむいておく。卵も半熟ちょっとにゆでてから殻をむいておく。タマネギは細かなみじん切り。
 ココット鍋にオリーブ油をたっぷりとり、まずタマネギを炒める。軽く焼き色がついてきたところで米を入れてさらに炒めていき、米が透明になったところで、カレーのパウダーなりペーストを好みの辛さに入れる。アドックをゆでたあとの煮汁を1リットル弱注ぐ。よく混ぜ合わせ、塩味を調える。沸騰してきたら火をできるだけ落とし、フタをして炊いていく。
 炊きあがったら、ほぐしておいたアドックの身を混ぜ入れ、エビをきれいに並べ、もう一度フタをしてさらに5分ほどむらす。ゆで上げておいたグリーンピースなどを加えれば、彩りがきれいになるし、栄養のバランスもとれるだろう。最後に、四つ割りにしたゆで卵を飾り、きざんだパセリを散らせばできあがりだ。飲み物は、辛口の白でもいいが、ビールもよく合う。(真)

アドック500g、米300g、タマネギ2個、卵3個、カレー粉あるいはカレーペースト適量、パセリ

●Haddock
スケソウダラeglefinのおろし身を低温でゆっくりと時間をかけて燻製したものがアドック(ハドック、haddock)。キロ20ユーロ前後。アドック独特の鮮やかなオレンジ色は、ベニノキの実からとられた色素によるものだ。真ダラを燻製にしたものはpoisson fum獅ニいう呼称で売られている。値段はずっと安く外見は似ているものの、大味で、調理すると身もパサパサしがちだ。
一般的な食べ方はアドック・ポシェ。300グラムほどのアドックを二つに切り分けてから、牛乳に2時間ほど浸す。底広の鍋に水と牛乳を半々を入れ、そこへ輪切りにしたレモン1個を加え、コショウをたっぷりと挽き入れる。中火にかけ沸騰してきたらアドックをなるべく重ならないように入れる。ここで火を落とし、アドックの厚さにもよるが、6分から10分でゆで上がる。付け合わせはゆでたジャガイモ。レモンの搾り汁とパセリのみじん切りを加えた溶かしバターを添える。

アドックのグリルもおいしい。まずアドックを5分ほど弱火でゆでてとり出す。クッキングペーパーで水気をよくぬぐう。はけを使って表面にオリーブ油を塗り、グリルするだけだ。クリームソースが合う。付け合わせはやはりゆでたジャガイモ。
魚のシュークルートを作るときも、サケや真ダラの他にアドックを加えると、その燻製風味がいいアクセントになる。

最後に、ボクがよく作るおつまみを紹介したい。アドックは湯がいてもいいのだが、面倒なときはそのままを薄く小さくそぎ切りにする。これに細ネギのせん切り、ショウガとニンニク少々をおろしたもの、シナモン少々を混ぜ入れ、タバスコを思い切りきかせ、ライムを搾りかけるだけ。友人たちに「カリブ風アドック!」とすすめる。好評だ。飲むお酒は、やっぱりライム割りのラムですね。

●maquereau fumé
 魚屋に皮があめ色になったサバの燻製も並んでいる。サバの燻製といえば、スウェーデンの夏を思い出す。ボクが世話になった家にはサウナがあり、サウナの日には、近所の人や友人たちがビールやおつまみ持参で集まってくる。そんな時、このサバの燻製が大活躍だった。サウナから出ると、ビール片手に、この燻製サバの固くなった皮をむいてから、レモンを搾りかけたり、アネット風味のヨーグルトソースやマヨネーズで味わったものだ。おろし身にたっぷりとコショウを挽きかけてあるものも、うまい。