Rembrandt fecit 1669

 レンブラント生誕400年を記念しリバイバル上映中の作品。評判が広まり、現在静かにロングラン中だ。これは名声を得ながらも、自らの芸術に固執するあまり次第に忘れられた不幸な巨匠の、世にも美しい映画の肖像画。監督ヨス・ステリングは、レンブラント的光と陰でスクリーン一面を覆うことに徹底的にこだわる。観賞後は、描くことと生きることが同義であった天才画家についてもっと知ろうと、美術館に走りたくなる衝動に駆られるはず。
 芸術家の伝記は映画的に手堅いテーマで、最近では『Klimt』、『Truman Capote』などがあった。本作は万人向きの映画ではないが、ピーター・ワトキンス監督『ムンク・愛のレクイエム』の、やや倒錯した匂いを放つ画面の強度を愛した人なら、きっとまた好きになってくれると思う。(瑞)

●V pour Vendetta
 近未来ロンドン。独裁政権が勢いづくパラレル・ワールドで、仮面をつけたおカッパ頭の謎の男が、一人政府転覆を企てる。直球の正義(打倒ファシズム)や演出(子供番組を思い出す炎の使い方)に一瞬面食らうが、シナリオも十分練られ、登場人物たちの心の震えも届いてくる力作。ナタリー・ポートマンのスキンヘッド頭も話題。ジェームズ・マクティーグ初監督作。(瑞)

 

 ●OSS117
 ヒッチコックの『知りすぎていた男』または007シリーズのパロディーかと思えば、実はフランス人作家ジャン・ブリュスが生んだフランス人秘密諜報員OSS117シリーズが原作。コネリーに劣らずハンサムでスマート、でも実際はかなり三枚目寄りのデュジャルダンがはまり役だし、1950年代のスタイルを現代風にアレンジしながら再現した監督アザナヴィシウスのセンスもなかなか。よくできた娯楽作品。(海)


Clovis Cornillac (1967-)
 新世紀以降、俳優クロヴィス・コルニアックの活躍ぶりは尋常ではない。作家性の強い作品からより大衆的な作品まで違和感なく入り込み、いつも当たり前のように、そこに存在するのだ。一見親しみやすい隣の兄ちゃんだが、それは錯覚。見つめればすぐ彼の瞳孔の鋭さに、射抜かれる思いがしてしまうのだから。
 14歳ですでに俳優を志し、自ら家を出る早熟ぶり。舞台を中心に活動を初め、16歳でピーター・ブルック演出の舞台『マハーバーラタ』に参加。これが、「演じることが自分の情熱」なのだと再確認する体験に。98年、トーマス・ヴァンサン監督『Karnaval』に出演。本作でセザール新人男優賞にノミネートされたが、メディアは彼を黙殺。「子供の頃からの夢だった映画の世界に自分の居場所はない」と悟ったのも束の間、本人のネガティブな予想とは裏腹に、映画の出演依頼が徐々に舞い込むように。代表作に『ロング・エンゲージメント』、『Brice de Nice』『ナイト・オブ・ザ・スカイ』。出演作がことごとく注目を浴びる強運も才能のうち。現在は主役を務める『Les Brigades du Tigre』が公開中だ。「時に人は僕を働き過ぎだと責めるが、理解できない。僕は毎日アトリエに通う必要がある、現役の職人だよ」(瑞)