パリから電車に揺られて2時間、ブール・カン・ブレス駅で下車。さらに車で30キロ北上すると、緑ゆたかな田園風景が広がって、ドブール夫妻の養鶏農家が見えた。春ほがらかなブレスの空の下、野鳥のさえずりは聞こえるが鶏の姿は見えない。このアン県内で2月半ばに鶏インフルエンザの感染例が見つかってから、草原での放し飼いが売りだった〈ブレスの鶏〉までも鶏舎の中に閉じ込めるよう県からおふれが出たのだ。
AOC(原産地呼称統制)が冠せられたブレスの鶏の飼育は、一羽につき最低10平米の草原を有することや、同地域で穫れる穀物や餌のみを与える、など様々な制約がある。ドブール夫妻はそのブレスの鶏1800羽を飼育し食堂も経営しているから、新鮮なブレスの鶏が食べられる! というわけだ。
唯一のコースメニューは、ドブールさんが飼育した豚で作ったパテとソーシソンで始まり、鶏レバーサラダ。そして食堂にいる50人位の客たち皆が目指してここに来ただろう、ブレス鶏クリーム煮。自家製バターミルクや、農家のトウモロコシ、そして草原のミミズや昆虫を食べ走り回ったブレスの鶏は皮も脂がしっかり、ひと噛みごとに滋味深く、生命の力を食べている気がする。芋グラタンもかまどで焼き、パンもドブールさんの小麦から作られたものだ。
「普段なら、白い鶏たちの姿が草原の白い点になって、いい眺めなんだ」。食後、農家を案内してくれたドブール氏が言う。農作業で鍛えられた厚い胸に穏和な笑顔が美しい。鶏インフルエンザ騒動で一時は減った客足も今では以前と同じ程度に戻った。「でも、鶏たちは太陽が出ると興奮して、鶏舎内でケンカしてしまう。早く外に出してあげたい」
4月に入ってブレスの〈鶏閉じ込め令〉は解除されたものの、実際に鶏を外に出すには獣医による検査のほか、厳しい基準をクリアせねばならず、まだ数週間
はかかりそうだという。外に出られて歓喜に満ちた鶏たちの叫び声と姿を、見に行きたくて仕方がない。(清)
ドブール夫妻の農家レストランでは、丹念に育てられた鶏を買うこともできる。
1キロ6.8€。雄鶏だと12~14€。雌鶏は10€くらい。
ドブール夫妻の農園には、鶏舎が7つ。
1800羽の鶏がこの中に…。
生命の力を食べている気がするブレス鶏クリーム煮。
Ferme Auberge du Colombier 01560 VERNOUX
04.7430.7200
宿泊施設はなく、昼食レストランのみの施設。
「鳥インフルエンザの正しい知識をお客さんに持ってもらうことが大切だ」 マルシェ・サントノレ通りの鳥肉専門店で働くクリスチャンは、この業界で15歳の時から働き始めてから20年というベテランだ。肉が好きで肉屋になろうと思い、精肉取り扱いの技術と理論を学ぶ専門学校で2年間しっかり学んだそうだ。
この商売で一番大変だと感じるのは、お店が昼休みに入る13時から16時まで、ひたすら肉を切る作業をしている時だという。「でも、どの商売にも苦労はつきものだよ。少しでも楽しくなるよう、ここでは従業員同士、そしてお客さんとのコミュニケーションを大切にしているんだ」と、とても前向きだ。
スーパーでパックに入った鳥肉を買っているだけではわからない、鳥肉に関する正しい知識をお客さんにきちんと伝えて、信頼を得ることにとても生きがいを感じるいう。「それと、美人のお客さんが来るとやっぱりうれしいな」と本音がポロリ。
この鳥インフルエンザの問題で、売れ行きは落ちていないのか、と尋ねてみた。「話題になったばかりのころや、フランスでも鳥インフルエンザのウイルスが発見された時は少しだけ落ちたかな。でもこの店では、鳥インフルエンザの正しい知識をお客さんに持ってもらうことを大切にしている。70度以上の熱を加えれば、ウイルスは死滅する、って分かってもらえるまで説明することにしている」。店内には、説明書きがあり、来店したお客さんに必ず読んでもらっているという。こんなクリスチャンに厚い信頼をよせて、今日もひっきりなしにお客さんがやってくる。(穂)
La Poularde Saint-Honor9 rue du Marché Saint-Honoré 1er
火~土7h30-13h/16h-19h30、日8h-13h。エルザさん
ダンサー
食べる頻度は以前と同じよ。鳥インフルエンザなんて怖くないわ。鳥肉はスーパーでは絶対に買わないことにしてるの。骨のまわりの肉やもも肉が好き。でも「サシミ」なんて絶対にノン! よくローストにして食べているわ。
ジュリアさん
弁護士
鶏肉は大好物だから、鳥インフルエンザに左右されることなく、よく食べるわ。特にもも肉が最高 ! 1羽を丸ごとローストして食べるのも好きだし、オリーブオイルで焼いたり、クリーム煮して食べるのも好き。