フランスのメディアは、犯罪や三面記事などで、両親が元植民地国からの移民で、本人はフランスで生まれ仏国籍をもちフランスの教育を受け、一般のフランス人と異なるのは、イスラム・アラブ系氏名と肌の色、宗教の違いくらいなのに、必ず「○○○ドリジンヌ・リバネーズ、アルジェリエンヌ、コンゴレーズ…」と、名前のあとに出身国名を加える。国勢調査では人種名、宗教を明示することは禁じられているのだが…。
メルティングポットの国、アメリカではアメリカ市民となった人がメディアで話題になった時、人名のあとに出身国名を付け加えるだろうか。昔からいる人も最近米国籍を取得した人も、宗教や肌の色に関係なく「アイアム アメリカン」と米国民であることに誇りを表すものだ。
昨年11月の郊外での若者たちの暴動は、仏社会の底に横たわっている人種・社会的差別への怒りの爆発だったと思う。大学を出ていても、移民家族が集中する郊外に住み、名前がアラブ系、または肌が黒いというだけで書類選考で外される人種・社会的差別。そうした差別を是正するため、企業は履歴書に写真、氏名を表記させずに番号制で書類選考をすべきだという声も最近聞かれる。そのあと面接という厚い壁が立ちはだかってはいるが。
日本にも採用時に在日韓国人に対する差別があったようだ。そうした差別をさけるために韓国人名を日本人名に変える人もいただろう。しかし多人種国フランスで、名字は変えられなくてもアラブ名、モハメッドやアシッドなどファーストネームを、就職のためにピエールとかジャンなどキリスト教徒名に変えたところで(回教徒は絶対しないと思うが)、肌の色や祖先が元植民地出身者であることを示す「オリジン」のレッテルをはることで、白人フランス人(Francais de souche)とは異なる「有色フランス人」 というカテゴリーを生みはしないか。郊外の青少年らはそうした人種差別を日常的に肌で感じているはずだ。
「移民同化政策」が失敗したフランスで、オリジンに固執する警察やメディアは、アフリカン、海外県出身者、マグレブ、アジア系などの有色コミュニティをますます個別化していくことにならないだろうか…。(ミツ)