こんな場所から攻めてみよう。
〈下水道〉
『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンの脱出劇で、一躍有名になったパリの下水道。中世までのパりは、汚物を道路の溝に垂れ流していたというから、不潔きわまりなかった様子が目に浮かぶ。オスマン都市計画によって下水道が完備され、やっとパリっ子が悪臭から解放されたのは、19世紀半ばのこと。地上の通路の真下に広がる闇の世界には、上下水管をはじめ、電気や電話の配管などが、網の目のように張り巡らされている。中でも変り種が速達便に使われた気送管pneumatique。残念ながら1984年に廃止されたが、熱烈なラブレターが行き交った時代もあった。現在は、国民議会から官報発行所へと送られる法案の送付経路として残っている。そんな下水道の進化の歴史を学習できる、真面目なスポットだ。(咲)11h-17h(5/1~9/30)、11h-16h(10/1~4/30)。木・金とセーヌ川増水時は閉まる。
入場料4€(割引3.2€)。Les Egouts de Paris : Pont de l’Alma(93 Quai d’Orsayの正面)01.5368.2781 www.egouts.idf.st/
〈カタコンブ〉
言わずと知れた納骨堂博物館。現在のレアール地区にあったイノサン墓地が飽和状態で伝染病汚染地域になったため、地下採石場に大量の骨が運び込まれたのが18世紀終わり。様々な教会からの骨も加わり、現在その数600万体。数世紀分の骨が集まっているが、特に1418年のペスト患者のものが多いとか。過去のオヴニーの記事に「ここで幽霊に会ったら年内に死ぬか、愛しい人を失う」とあるので、嫌々見学に。階段で地下深く降り、長い長い通路を抜けると、ようやく骸骨集団とご対面。ドクロの花道を小走りに通り抜ける。道が狭いので、間違って転んだら骸骨と口づけになるかもと、変な不安が頭をよぎる。途中で水のしずくが頭に垂れ落ち、恐怖で頭の毛穴が開いたが、無事に脱出成功。パリの濁った外気が妙に新鮮に感じられた。(瑞)10h-17h。月祝休。入場料5€(割引3.3€)。
Catacombes de Paris : 1 av. du Colonel Henri Rol-Tanguy 14e 01.4322.4763〈ルーヴルの中世要塞〉
シュリー翼の入り口の先をまっすぐ進むと、中世の要塞が突如現れる。もともとルーヴルの建物は、フィリップ2世の統治時代(1180-1223)にアングロノルマン人の攻撃からパリの街を守るための城門だった。その後、フランソワ1世の宮殿となり、歴代王によって大工事が行われたルーヴル。そして近年、ガラスのピラミッド建設にあたって、1984年に偶然発見されたこの要塞には見学者も興味津々。高く積み上げられた石の壁は迫力があり、当時は、身を守るために、このような強力な城壁を築かなければ安心できなかったのかな、と想像してしまう。人気がなくなると、まるで中世にタイムスリップしたようで、鎧を着た騎士がふらっと現れそうな雰囲気。この要塞はルーヴル所蔵のさまざまな傑作にも負けない。(穂)9h-18h(水金は22hまで)。火休。
入場料8.5€(割引6€)。
Louvre médiéval : ルーヴル美術館内 www.louvre.fr
〈ノートルダム大聖堂の地下〉
パリの歴史は、3世紀、シテ島に始まった。ガロ・ロマン時代といわれる、当時の生活様式が、写真やパネルで紹介されている。そのころ、狩猟では野ウサギや鹿を、漁ではカマスやウナギを獲っていた。牡蠣もしょっちゅう食卓に登場したようで、パリっ子の生ガキ好きは、最近に始まったことではないんだな、と納得。世界最古の料理本 “De Recoquinaria”では、ガロ・ロマン時代きっての料理人アピシウスが、468種ものレシピを残している。また、ここでは中世の住居跡や小さな港跡も見られる。6世紀の城壁跡の真後ろに、19世紀の下水道跡が残っていたり、異なる時代の遺跡を同時体験する楽しみも。(咲)10h-18h。月休。入場料3.3€(割引1.6-2.2€)。
La crypte archéologique du Parvis de Notre-Dame :
1 place du Parvis de Notre-Dame 4e 01.5542.5010
〈クリュニーの大衆浴場跡〉
クリュニー・ラ・ソルボンヌ駅を地上に出てすぐに現れる古い建造物。ちょっと入り口が分かりにくいけれど、ここは国立中世美術館。15世紀末、ブルゴーニュのクリュニー修道会によって建てられたのだが、この地下部分には、なんと2世紀末から3世紀初めにかけて造られたガロ・ロマン時代の大衆浴場(thermes)跡がいまも残っているのだ。温度の異なる3種類の風呂(水風呂、ぬるめの風呂、熱い風呂)があったといわれ、当時の浴場とはすべての階層が一堂に集まる場所だったという。水風呂跡には青いライトが当てられて、なんとも幻想的。上階の「貴婦人と一角獣」の6枚のタピスリーもぜひ鑑賞したい。(穂)9h15-17h45。火休。入場料6.5€(割引4.5€)。
Les thermes gallo-romains/Musée National du
Moyen Age : 6 place Paul Painleve 5e
www.musee-moyenage.fr
〈ウルスカンの館〉
13世紀、オワーズ県ウルスカンにある修道院が所有していた、マレ地区の館。ゴシック様式の地下のカーヴは、歴史記念建造物に指定されている。ここを修復した〈Paris Historique〉という協会は、マレを中心に歴史建造物の修復を手がけるボランティアの集まりで、1963年の設立以来、精力的に活動を続けている。この協会が初めて手がけた作品が、ウルスカンの館であり、マレが生まれ変わった第一号的な存在となっている。(咲)14h-19h。日休。
Maison d’Ourscamp : 44-46 rue Francois Miron 4e01.4887.7431
〈サンマルタン運河の地下遊覧〉
パリの地下をクルージングできる船が存在する! と聞いて、半信半疑で乗ってみることに。ヴィレットを出発し、サンマルタン運河を渡り、レピュブリック付近で水路も終わり…と思ったら、なんとトンネルのようなものに入った。ここはリシャール・ルノワール大通りの地下部分。1860年にオスマン都市計画の一環として造られたのだが、その資材となったのが、1789年のフランス革命で破壊されたバスティーユ監獄の建物だという。トンネルを抜けると、両脇に大小さまざまな船が並び、振り返るとそこはバスティーユ広場。気さくで物知りなガイドさんの解説付きで、2時間半があっという間に過ぎた。(穂)
3/19~11/13は定期運行。9h30(オルセー美術館前発)と14h30(ラ・ヴィレット発)の毎日2便。16€(割引13€)。要予約 。
ガイド付(仏語・英語)。
Paris Canal 01.4240.9697 www.pariscanal.com/
〈パッシーの無料地下水〉
19世紀の半ば、コレラ菌の大流行を発端に、オスマン男爵の都市計画で造られたラマルチーヌの泉。590mの地下深い水源から汲み上げられる水は、ブローニュの森の池を満たしている。石灰分が少なく、ミネラルとカルシウムを含む、実にヘルシーな水で、地元の住民がひっきりなしに訪れる。試しに飲んでみる。なるほど! 美容にも良さそうだ。次回は、ペットボトル持参で来ようかな。(咲)5h-23h。Fontaine d’eau de source / Square Lamartine :
193 av. Victor-Hugo 16e