善人たちのプチドラマを素直に楽しみたい。 “Fauteuils d’orchestre”

 映画の舞台が知っている場所だと何となくうれしい。ダニエル・トンプソン監督の『Fauteuils d’orchestre / 一階席』はモンテーニュ通りの高級ホテル、プラザ・アテネ、並びにあるテアトル・デ・シャンゼリゼ、その前にあるカフェ・デ・テアトル周辺を背景にした群像劇。ベルギー出身なのに(隣国への偏見が入ってます)きっぷの良さが魅力のセシル・ド・フランスが狂言回しをつとめる。

 彼女は、プラザ・アテネのメイドをしていた祖母(先頃87歳の現役で亡くなったシュザンヌ・フロン。これが遺作)に「ハイソにはなれない私たちだけどハイソの中で自分は働いた。おまえも世界を見ておいで」とすすめられ上京して来る。このウェルメイドな商業娯楽作の中で何故かこのシークエンスが一番ひっかかった。社会階級差に対する庶民の感覚。ブランド・ブティックのショーウィンドーの商品の値段を見て目を丸くする彼女は確かに庶民代表。かたや彼女が出会う選民(!?)は、自分はこのままで良いのか? と悩んで妻兼マネージャー(ラウラ・モランテ)を困らせる天才ピアニスト(アルベール・デュポンタル)であり、キャリア転換を試みる人気女優(ヴァレリー・ルメルシエ)であり、一生かけて収集したオブジェを全部競売にかける金持ち(クロード・ブラッスール)とインテリ層所属の息子(クリストファー・トンプソン)。そしてフレンチポップスをこよなく愛するクラシックの殿堂的劇場の管理人(ダニ)も気のよい庶民を代表して選民を癒す。
 階級差を素直に受け入れて真っ直ぐ生きる人々の人間模様。大きな不満や小さな不満を抱え、小さな幸せや大きな幸せを求める。本人には大も小もない。とりあえずはフランス社会にすっぽり埋まった善人たちのプチドラマを素直に楽しむこととしよう。(吉)
●若松孝二監督にも焦点
 毎年サン・ドニ市の映画館〈L’ECRAN〉で開かれる「このように人間は生きているのか?」という大きな括りの映画祭は凝った番組構成。6回目の今年(2/22~28)は「セックスは政治」というこれまた刺激的な副題。熱い政治の時代を過激に駆け抜けた映画作家、若松孝二氏もゲスト参加し『性賊 セックス・ジャック いろはにほへと』(70)、『処女ゲバゲバ』(69)、『赤軍派-PFLP 世界戦争宣言』(71)、『天使の恍惚』(72)、『ゆけゆけ二度目の処女』(69)と『愛のコリーダ』(脚本 76)を上映。(吉)
www.lecranstdenis.org/est-ce-ainsi.html

 

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