イノセントであることの罪。”L’Enfant”

 本年度カンヌ映画祭監督賞のミヒャエル・ハネケ『Cache』に続いて、いよいよパルムドール受賞作、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの『L’Enfant』が封切られる。どちらもさすがに重厚な作品で、観客を客観者として甘やかしてはくれない。まあ平たく言えば「考えさせられてしまう」のである。
 ダルデンヌ兄弟の名を世にとどろかせた96年『イゴールの約束』で15歳の少年イゴールを演じたジェレミー・レニエがブリュノという、まったくもって思慮深くないその日暮らしの20歳の青年を演じる。ガール・フレンドのソニア(新人のデボラ・フランソワ)が彼の子を出産する。家族が三人に増えた危なっかしい若いカップル。でもさすがに女性は母としての自覚をすぐに身につける。ところがブリュノときたら、ソニアの目を盗んで、なんと我が子を売ってしまうのである! それを知ったソニアの動転ぶりを見て、初めて何かを感じるブリュノ。子供を買い戻して(!)も、ソニアは彼を許さない。その後のある事件が、彼に生まれて初めて反省の機会を与える。それまでのブリュノには罪の意識などなかった。人間としての父としての自覚などなかった。余りにあっけらかんと善も悪もなくただ生きるために生きて来た。ある意味、彼のしてきた行為は、イノセントであることの罪である。
 一方『Cache』でハネケは、イノセントな罪でさえ罪は罪であると容赦しない。まあ主人公(ダニエル・オートゥイユ)が、子供のころにしたある行為は、まったくイノセントであったとは言えないが、結果、ある人間の一生を左右していたのである。主人公にとっては遠い昔の出来事であり、記憶が抹殺されていた。その無自覚が罪なのかも知れない。(吉)