「地上に太陽」「夢のエネルギー源」と期待されている国際熱核融合実験炉ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)計画。6月28日、モスクワで開かれた関係6カ国・地域(日・EU・ロ・米・中・韓)閣僚級会合は、過去10年にわたって六ヶ所村への活発な誘致活動を続けてきた日本を退け、ITERの建設地として南仏のカダラッシュに軍配をあげる。 ITERとは、1985年11月のレーガン・ゴルバチョフ米ソ会談が発端となり、米国は99年に同計画から脱退し03年に政府間協議に再合流し、中国や韓国も参加。この20年間紆余曲折を経ながら日本とEUが中心となって進めてきた国際共同プロジェクトだ。 シラク大統領は、仏国民のEU憲法拒否や、6月16日、17日のEU評議会でのブレア英首相との仏英エゴイズム丸出しの激突でEU次期予算案見送りと、内外で顔に泥を塗られっぱなしだが、仏原子力研究機関のあるカダラッシュにITER誘致を勝ち取り、万々歳。南仏4県の議員らも、EUのシリコンバレーが地元に、と21世紀の南仏を夢み、周辺の土地開発に勢いづく。 ITER建設費に47億ユーロ(EUが40%、6カ国が10%ずつ負担)と建設に10年、運転期間約20年(費用約48億ユーロ)と、石油やガスに代わる新エネルギー開発研究に約30年必要。この膨大な計画を断念した日本は見返りに関連研究施設の建設(建設費はEUと折半)と、ITERに携わる約千人にのぼる研究者・技師・職員の20%と、運営組織のトップのポストを日本人が占めるという優遇措置に甘んじる。 太陽や星が核融合反応により光や熱を発しているように、これを地上で実現しようとするのがITER計画。水素の仲間である重水素と三重水素(トリチウム)を融合させ、ヘリウムと中性子に変えるプロセスで膨大なエネルギーが放出される。重水素と三重水素からなる燃料1gが反応すると、プラズマ温度は1億度にも達し、タンクローリー1台分8トンのエネルギーが発生するそう。そして核融合は暴走することなく核分裂より安全対策が比較的容易。そのうえ二酸化炭素の発生が少なく、高レベル放射線廃棄物は発生しないなど、恒久的エネルギー源の一つとして絶大な期待が寄せられている。 それに反し、フランスの緑の党や反核団体はITERによる環境破壊の恐れや、カダラッシュが南仏の断層地帯から数キロという地震の危険性などに加え、ITERの建設・運転費が膨大すぎると批判的だ。(君)
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核融合炉は、ドーナツ型の超高温(1億度)プラズマ(高さ7m 、外径約16m、体積約800m3)の中で重水素と三重水素が核融合反応し、ヘリウムと中性子に変わるプロセスで膨大なエネルギーが発生する。 プラズマの下部にある部分は、高い熱流や粒子の流れを受けとめるダイバータ磁場。 資料:日本原子力研究所那珂研
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