Carrelet braise au four
魚屋に、時々、全長50センチ以上、重さ2キロはありそうな大きなカレイcarreletがどんとおいてある。これを逃す手はない。カレイ類は身の割合が少ないから、これで4、5人分だ。うろことハラワタをとってもらって買って帰る。和風に刺身もおいしいけれど、丸ごとオーブンで焼けば見栄えのいいごちそうになる。
フランス風にひれをはさみでじょきじょきと切り落とし、水洗いしてから、クッキングペーパーで水気をよくぬぐう。
オーブンを200度(目盛り7)に合わせて点火しておく。
魚がきちんと収まるオーブン皿にバターをたっぷりと塗る。どうしても魚が大きすぎるようなら、頭を落としたり、二つに切り分けることにしよう。そのオーブン皿にみじんに切ったエシャロットを散らす。好みではせん切りのショウガ少々も加えたい。その上にカレイを置き(もちろん目の方が上)、白ワインを注ぎ、塩、コショウし、熱くなっているオーブンに入れる。焼き時間は30分くらいのものだが、水分の蒸発を防ぐために15分たったところでアルミホイルで全体を覆いたい。
焼いている間に、付け合わせのジャガイモをゆでたり、あるいはホウレンソウをゆでてからバター炒めしたりしておくといい。
焼けたカレイを盛り付け用の大皿にとり、冷めないように、火を止めて半開きにしたオーブンに入れておく。
オーブン皿に残った煮汁を鍋にとり、少々煮詰めて火から下ろす。ここへ小さく切って冷たくしておいたバター40グラムを加え、泡立て器でかき混ぜながらとろりとしたソースにする。最後に塩、コショウで味を調え、みじん切りのシブレット少々を加え、ソース入れにとる。
ワインはボルドー産のentre-deux-mersなどがいいだろう。(真)
カレイ1尾(1.5kg前後)あるいは300gくらいのものを4尾、エシャロット3個、好みでショウガ少々
白ワイン200cc、バター80グラム、塩、コショウ
●カレイ、ヒラメ豆辞典
カレイやヒラメのごとく平たい魚をフランス語では文字通りpoisson platという。アラが半分くらい出てしまうので、一人当たり300グラムくらいの魚が必要だ。魚屋さんにおろしてもらった時も、このアラを持って帰ること。fumet de poissonと呼ばれるおいしいダシをとることができる。この種類に属する魚はどれをとっても、脂肪分の少ない締まった白身を持っていて、消化にいい。
ヒラメ turbot
フランスでは魚の王様。値段もキロ20eを超える。全長50センチ、2キロ前後のものが魚屋に並ぶ。小さいものはturbotinと呼ばれる。ヒラメの繊細な風味を生かすには、ポシェしてから好みのソースを添えるのがいちばんだ。
barbue
ヒラメ同様、目は左つき。ヒラメよりは小さめでやや細長い。素晴らしい味だが値段もヒラメ並み。
舌ビラメ sole
名前にヒラメがつくけれど、カレイ科の魚で目はカレイ同様に右つき。フランス人に古くから愛されてきた魚のひとつで、舌ビラメのムニエルはあまりにも有名。小さいものはsoletteと呼ばれ唐揚げにするとうまい。
carrelet
今回のレシピに使ったカレイ。味の繊細さではヒラメに負けるけれど、値段はキロ8ユーロ前後でお得。和風に煮付けるときはこのカレイがいちばんだ。子持ちだったりしたら万歳!
マコガレイ limande-sole
中型のカレイだが、時々目が左つきだったりする。味は繊細で舌ビラメよりうまいくらいだ。ポシェ、ムニエル、唐揚げなど、大きさに応じていろんな調理が可能。これに軽く塩をして、一日、二日おいてから焼くと、新潟の柳カレイの塩焼きも脱帽のおいしさだ。
●山本ゆりこ『チーズケーキの旅』
オヴニーで〈パン屋さんのふつうのお菓子たち〉や〈パリのサンドイッチワールド〉の特集を担当してもらった山本ゆりこさんの新著は『チーズケーキの旅』。製菓のグラン・ディプロムを持っている著者ならではの視点で、チーズケーキを求めて、フランス、ギリシャ、ロシア、ドイツ、イタリア、イギリス…を行ったり来たり。各国自慢のチーズケーキが、美しい写真入りで紹介され、それぞれのレシピも載っている。さっそく試してみたくなった。(真)