オルセーで新印象派展が開かれている。 「新印象派」は、19世紀の光学色彩理論を絵画に適用し、混じりけのない色の点を並置することで、離れて見た時まとまった色の効果を出すことを目指した。スーラとシニャックが代表格だ。 スーラは31歳で夭折したが、若いシニャックが後を引き継ぎ、技法と理論を発展させた。新印象派の斬新さはまたたく間に北ヨーロッパの美術界に影響を与え、ベルギー、オランダ、フィンランドなどから優れた作品が現れた。 会場には、これらの画家たちの作品が展示されているが、カタログを見なければ出身国がわからない。画家たちの情報がまったくないのが残念だ。 スーラの絵は、計算され尽くした完璧な作品と言われている。確かに。しかし、整備されたフランス式庭園のような、理論的な美につきものの窮屈さがある。理詰めで絵を描いたスーラという人は、相当なカルテジアンだったに違いない。それに加え、動きがない。躍動感を描いたはずの「サーカス」でさえ、人も馬も止まっている。 クロスなど他の画家も同じだ。人物が描かれると、突然そこだけ画面の密度が増して重くなり、結果的に人物が硬直する。風景画では、空も木も建物も同等で調和を保っているのに、なぜか。人間を生物界の階層の頂点に据える西洋の考えが無意識に表れ、力の入れ方に差が出たのではないだろうか。 前半の部の、風景画の展示室と人物画の展示室を見比べてほしい。例えば、オレンジがかったレンガ色と青の対比が大胆な、クロスの「アンチーブの入り江」には、色で遊んでいるような楽しさと軽さがある。人物入りの画面とは比べものにならない。新印象派の技法は、静かな風景画のほうがはるかに成功している。 後半には、新印象派から影響を受けたが、理論の枠から解放されて、自由に創造性を発揮した画家たちの作品が並んでいる。フォービスムやキュビスムへの影響がよくわかる、説得力のある展示方法だ。モジリアニの人物像、クレーのモザイク風の海岸風景など、思いがけない作品にも出会えて、最後まではっとさせられる展覧会だ。(羽)
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オルセー美術館 |
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Galerie Yukiko Kawase ロンドン、N.Y、ボローニャなどの現代アートフェアで活躍しているギャラリスト河瀬由起子さんが4月より新たにオープンしたギャラリー。 N.Y在住時代に現代アートギャラリーの仕事を始めた河瀬さんは社会学を専攻していた経験を生かし、世界情勢とアートの流れを分析して巧みに繋げる視点がとても興味深い。パリ、NY、東京を拠点に、国境やジャンルを越えたエネルギーを持つ有望な若いアーチストを発掘して育てている。7月9日までパリの日仏アーチスト「Wakana」の個展を開催中。今後はアメリカで活躍するヨーロッパ出身アーチストのグループ展を催す予定。ヒップでパワフルなビデオアーチストやウィットに富んで叙情的なイラストなど、濃いキャラクターをもった作品が多く期待できる。(久) |
8, rue Adolphe Focillon 14e 01.4044.0132 |
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●Marian WIJNVOORD (1966-) 視覚が精神に作用する直前、存在の残像のような風景。オランダ人画家の油彩作品。6/25迄。 Galerie Birthe Laursen : 56-58 rue Vielle du Temple 3e ●Objectif Paris 2 ●Gilles Sacksick (1942-) ●Joan JONAS (1936-) ●Robert MALLET-STEVENS (1886-1945) |
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