フランスを襲うアスベスト禍。

 フランスではアスベスト(石綿)は、60年代以降の鉄骨建築、パリ第7大学やモンパルナスタワー、サン・ルイ病院などの公共施設や、今日除去・解体作業が問題になっているクレマンソー旧航空母艦などだけでなく、1997年以前に建てられた建物の90%になんらかの形で使用されているという。
 1976年12月、がん研究国際センターの国際会議がアスベストを発がん性物質と認定、それから20年後の1997年、フランスは初めて禁止令を発布した。その間、現代建築に不可欠な補強材や断熱剤として鉄骨や隔壁、仮天井、導管などにアスベストが吹き付けられ(フロック加工)、セメントや漆喰にも加えられ、パン焼き網やアイロン台、ブレーキパッドなどにも「マジックミネラル」として多用された。フランスは、国民一人当たり80kg相当のアスベストを輸入した同鉱物の輸入大国だったのである。
 1993年、アスベストによる肺がんや中皮腫、呼吸不全で、544人が初めて職業病患者(全体の8%)に認定された。2002年は4494人と急増(14%)。アスベスト暴露は建設労働者やメンテナンス作業員、最近は事務員や教員にまでおよび、毎年2000~3000人が職業病患者に。シェルブールの海軍造船所ではすでに1500人の労働者が暴露しており、毎年患者が約100人ずつ増加。多くは50代で死亡。暴露から発がんまで潜伏期間は20~30年で、今日の発病率からすると2025年には約10万人のアスベスト症候群が予想される。
 アスベスト被害者賠償基金は昨年だけで賠償金要求者1万5000人のうち6240人に2億2700万ユーロの賠償金を支払っているが、会計検査院の報告書によると同年だけで賠償金総額は14億ユーロにのぼる。
 一方、政府はモンパルナスタワーのような高層ビルに対しては03年末(民家以外のその他の建物は05年末)までに、建材のアスベスト含有量の測定と除去作業計画書の提出を義務付けているが、その実施状況を監視する法的システムは皆無の状態だ。今後アスベスト除去作業が盛んになっていくだろうが、問題は作業員の安全性のほか環境汚染にまでおよぶ可能性もあり、専門企業の認可の制度化が待たれている。
 第7大学でのアスベスト除去作業だけで同剤を含む廃棄物は1887トン、他の汚染廃棄物は7363トンにのぼる。それらの除去とランド県にあるガラス化処理工場までの輸送。数十万、数百万の建物からアスベスト汚染廃棄物が戸外に出され運ばれていくことになる。アスベストのツケは長く続きそう。(君)