仏社会党を襲っている欧州憲法条約賛否論争と混線しながら左右両派が論戦の火花を散らしてるのがトルコのEU加盟問題だ。 10月6日、EU委員会がトルコは「EU加盟交渉開始に必要な基準を満たしている」とし交渉開始を勧告、12月17日の首脳会議で交渉を開始するかどうかが決定されるという日程まで発表。交渉期間は10年から15年、その間に民主化や人権、少数民族クルド人問題などの改革、進展が危ぶまれる場合は「交渉を停止」と、トルコに苦い薬を飲ませるのだが、「トルコの加盟=イスラムのEU入り」ととる危機感が政治家から国民にまで感染したよう。EU委員会の発表直後の世論調査によると、フランス人の平均75%がトルコのEU加盟に反対している。 1963年、ドゴール大統領がトルコは欧州加盟の資格ありとし加盟を約束。ミッテラン大統領も「欧州には地理的、文化的境界はない」とし、シラク大統領もトルコの加盟を強く支持。1999年、EU首脳会議はトルコを加盟候補国と認定。歴代大統領、政府が長い間、トルコにEU加盟への夢を抱かせてきたのに、シラク派与党UMPが反トルコの論戦を張り、左派も巻き込む勢い。トルコ加盟問題で孤立するシラク大統領は最後の切り札として、今後はトルコも含めEU拡大ごとに国民投票にかけると発表。15年間トルコにお預けさせた後、エサを与えるかどうかは国民投票の結果次第とは、トルコには完全な肩透かしとなりかねない。 反対派の理由:トルコは地理的文化的に欧州に属さない/人口7000万人、2020年には1億人。EU最大となり均衡を崩す/同国移民の大量流入/トルコへのEUの補助金が年250~350億ユーロ必要/1人当り国内生産はEU平均の1/10で差がありすぎる/イラン、シリア他イスラム原理主義国と隣接…。 賛成派の理由:オスマン帝国は欧州の一部を支配していた/40年来の約束を果たすべき/トルコの加盟で二つの文明が和合、イスラム世界との中間地帯になれる/EUが若返り強大になる/人権、民主化改革への現トルコ政府の努力を認めるべき/EUに加盟させないとトルコは米国側についてしまう…。 反対と賛成をはかりにかけどちらがEUの将来に有利か選択を迫られるなかで、10月14日、国民議会でラファラン首相は「欧州もトルコもそのEU加盟には今も将来も準備ができていない」と苦しい答弁。が、与野党議員らは口をそろえて、トルコは加盟でなくEU特別のパートナーとすべきと、苦肉の策をひねり出す始末。(君) |
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