ローランギャロスから始まり、ユーロ2004、ツール・ド・フランス、そしてアテネオリンピックと、スポーツイベントが続いたこの2004年夏。スポーツ観戦のためにプラズマテレビの売り上げも増えたという。
本書はこの春、まったくタイムリーに出版されたものだが、著者はスポーツを専門とする社会学者で、すでに数冊の著作がある。本書で試みられるのは、スポーツの社会学的描写と観察であるといってよいだろう。娯楽として、スペクタクルとして、職業として、スポーツは現代社会の構成要素の一つであるだけでなく、スポーツの問題は現代社会の問題である。つまり、20世紀がスポーツの世紀であることと、20世紀が二つの世界大戦とさまざまな大量虐殺によって特徴づけられることとの関連は?テレビの発展とスポーツの関連は?マルクスの労働理論がどうスポーツと関係するか?等々。
スポーツ自体に関しては、フランス国内リーグの仕組みやツール・ド・フランスの人気と廃退の仕組みなどが描かれている。が、スポーツのメカニズムは、均一性と不均一性、同一化、テンション、自然との闘いなどの抽象的観念で説明されており、こうして見えてくるのは現代社会の仕組みだ。
また、フランスで唯一のスポーツ紙であり、「聖書」とも言われる『レキップ』の参照が多いのはもちろんだが、文学者ではモンテルランやベルナノス、プルーストが言及されているほか、セリーヌの名前も見られたりすることは、本書が単に社会学的な視野や、スポーツという狭い枠にとどまらず、幅広い考察を提供していることを示していることだろう。
個人的には、最後に言及されるスポーツと宗教性、「聖なるもの」との関係についてはもうちょっと展開してほしかったが、現代のスポーツについて、そして、スポーツを通して現代社会について考えさせられる本だ。(樫)
Paul Yonnet, Huit lecons sur le sport
Gallimard, “Bibliotheque des sciences humaines”, 2004, 256p., 15euros.
