葉巻をくわえたチェ・ゲバラやピカソのポートレートで知られる写真家ルネ・ビュリの半世紀にわたる写真展が開かれている。 ビュリは1933年チューリッヒ生まれ。報道写真家としてマグナム・エージェンシーのメンバーとなり、1956年のスエズ戦争をはじめ現在まで世界中の主要な出来事を追い、写真を撮り続けてきた。それと平行して東欧諸国、中近東、アジア、東南アジアにおいても、特派員として多数のルポルタージュ写真を撮っていて、これらを合わせたビュリの集大成とともに20世紀を顧みられる写真展である。 ビュリは自分の撮る写真を政治に対する討議の手段とみなし、多くのテーマとなっている戦争写真からは巧妙に暗号化されたメッセージが感じられる。ビュリの戦争写真には血や死傷した兵士、民間人は見られない。ただ幾何学模様のように並ぶミサイル、兵士の陰に渡り鳥のように整然と飛ぶヘリコプター、廃墟に差し込む柔らかな光。どれもが偶然とは思えない完璧な構図で瞬間を捉え、感動的で美しい。しかしその美しさは戦争の虚しさを物語る。このビュリの写真展では、『戦争とユートピア』をテーマに個別展示された部屋があり、抽象的なモチーフのカラー写真を真ん中に、左右には戦争と理想郷という両極地が構成されている。各写真タイトルなどは表示されていないが、全体からは強いメッセージが伝わってくる。 ビュリは、時代の流れや変わり目を生き抜く世界中の人々を常に行動的に写真に撮ってきた。20世紀中期、古い文明を持つ中国が迎える飢餓や爆発的な人口増加、文盲率の上昇といった混沌の渦中求められる新しい思想。または1955年に始まったブラジリアのユートピア構想における街の建設。さらにビュリはイヴ・クライン、ティンゲリー、ジャコメッティ、ピカソら幻想の芸術家たちの創作現場に密着。または「夢の構築家」コルビュジエをこよなく好んで写真に撮った。 ビュリの写真からはすべてのテーマに共通した完璧な美意識が感じられる。それはおそらく彼が各瞬間に込めた未来への希望なのかもしれない。(久)
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Maison Europeenne de la Photographie : |
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DO YOU LIKE YEN ? 経済と家庭生活のエコロジー。 「私たちは被害者でもなければ、受動的立場にもいない。むしろ加担者なのかもしれない……」 DO YOU LIKE YEN ? は、インタラクティブのアクション。A3大に印刷されたピンクの一万円札に、落書きやコラージュ、絵、文章で自由に表現するという単純なもの。私たちが何の加担者なのかというと、私たちの身辺の喜怒哀楽の出来事はもちろん、遠くで起きている幸・不幸な出来事、一見関係ないと思われるような些細なことから戦争のような大きな出来事…。日々の買い物の時、または株投資のような劇的瞬間に抱く個人個人の欲望や、「その結果としての物質・行動」を生む原因となる意識を捉えることで、私たちの生活がもっとポジティブにならないだろうか? という問いがこのプロジェクトの目的だ。 しかし「劇的な覚醒」という幻想は、後でリバウンドが来そうだ。意識の覚醒は、イベントのようには刻印されない日常生活の中でジワジワ起こってくるものなのかもしれない。 「アンチ資本主義」OK。「お金大好き」大歓迎。「金欠」同感! 戦争反対、有事法賛否……個々人の出来事への理解のレベルとその質が表現されればいい。どんどん参加しよう。(麦)
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*http://linked222.free.fr/(ネットからも参加可。寄せられた作品はギャラリーとネット上、夏にフリーペーパーで発表される) |
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●〈Portrait de la chair〉 ゴンクール賞作家でエッセイスト、シナリオライター、そして写真家でもあるPascal Lain獅フ作品。顔も影もない、官能的だが不安を掻き立てる女性の肉体。3/13迄(日休) Galerie La Capitale: 18 rue du Roule 1er ●〈Spoon Cook Book〉 名シェフ、アラン・デュカスが世界中に展開するレストラン「Spoon」のレシピを200種類紹介した料理本の写真展。モダンでライトなレストランにふさわしく、ファッションフォトグラファーThomas Duval のグラフィカルで透明感のある料理写真。3/12~4/17迄 Galerie Fraich’Attitude: 60 rue du fg Poissonniere 10e (日月休) ●Gerard GAROUSTE(1946-) 神話や聖書の逸話を題材に作品を展開してきたガルーストの近作は肖像画のシリーズ。それぞれの人物たちの私的な神話を描き出す。3/6~4/24迄 Galerie Daniel Templon: 30 rue Beaubourg 3e(日休) ●〈Kang xi, Empereur de Chine〉 清の聖祖時代(1662~1722年)の書画、彫刻、磁器、漆器など、紫禁城のコレクションを展示。5/9迄 ヴェルサイユ宮殿内美術館(月休) ●〈Primitif francais, Decouvertes et redecouvertes〉 ルネサンス以前、15世紀のフランス・プリミティブ・アートの作品。絵画、写本装飾、デッサン、タピスリー、ステンドグラスなど。5/17迄 ルーヴル美術館リシュリュー翼(火休) ●〈Otoko〉 女性写真家、水谷美香がとらえた裸の少年たち。高さ1.7mのプリントに大きく引き延ばされた体のディテール、トルソー。5/20迄 Shiseido la Beaute 3 bd Malesherbes 8e ●〈Guernica〉 スペイン内戦を描いた「ゲルニカ」。ピカソがこの作品を制作したアトリエに同作品のタピスリーを展示。ピカソ自身が注文した3枚のうちの1枚。5/28迄 Grenier des Grands-Augustins: 7 rue des Grands-Augustins 6e 月-金(15h-18h30)要予約: 01.4354.0900/0954 ●〈La Grande Parade〉 18世紀のイタリアで、町から町へと渡り歩いた道化師、曲芸師などの大道芸人たち。華やかだが空虚ではみ出しものの彼らに、アーティストたちは現世の本質を感じ取ったのだろうか。大道芸人をテーマとする過去2世紀、ヴァトー、ゴヤ、ピカソ、ボルタンスキーなど約200点の作品。3/11~5/31迄 Grand Palais: square Jean Perrin 8e(火休) |
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