抽象の起源。 Aux origines de l’abstraction 1800-1914

 『抽象絵画の源を探る』というテーマの展覧会は、フランスではこれが初めて。  
第一部では、当時の科学的発見や理論に影響を受けた、19世紀以降の光の扱いの変遷を紹介する。1810年に「色彩論」を発表したゲーテは、色彩は明暗のコントラストから生まれることを説いた。続いて1839年、フランスの化学者シュヴルールが、色のコントラスト理論を発表する。コントラストを作る主色/補色の組み合わせを想定し、コントラストが強くなるほど色が輝くとしたシュヴルール理論は、印象派、ドローネー夫妻に至るまで、近代絵画に大きな影響を与えた。
 風景が光に溶けてしまうターナーや、ルーアンのカテドラルに注がれる光の一日の変化を追ったモネの作品は、具象から抽象への移行の前段階的作品といえよう。時代が下がるにつれて、色彩は断片的になる。そして第一部の終わりでは、作品は色彩の饗宴の場となっている。
 展覧会の目玉は、チェコ出身のクプカだ。めまいを誘うような、有機的な動きのある作品を見ていると、生命の神秘に思いをはせずにはいられない。クプカには色の響きがある。色が主体性を持って、見る者に語りかけてくる作品だ。
 他の一部の絵にも、「科学的理論の応用」だけでは説明しきれないものが感じられたが、抽象絵画と精神性の関係は、1986年にロサンゼルスの展覧会ですでに取り扱われたとして、この展覧会では排除された。この点、不満が残る。
 第二部では、音楽を視覚的に表現しようという、20世紀初頭の野心的な試みが紹介されている。色から音楽や香りを連想するような、異なる感覚の連結を「共感覚」というが、カンディンスキーはその種の感覚の保持者だったのかもしれない、と言われている。しかし、カンディンスキーを含め、会場の作品群から感じられるのは、音というよりも色の躍動だ。音楽は本当に絵画で表現できたのか?「踊り」がテーマの最後の展示室の作品を見て、やっぱり、と思う。動きはしっかりと色で表現されていた。しかし、そこから音が聞こえてくるか? は、別の問題だ。(羽)
Frantisek Kupka
Disque de Newton 1912


*オルセー美術館
2月22日まで(月休)
10h-18h(木は21h45まで。日は9hから)


Portraits / Visages 1853-2003

  国立図書館所蔵の19世紀から今日に至る写真コレクションから「ポートレート/顔」をテーマに200点をセレクトした展覧会。
 まずは19世紀半ばから20世紀初頭、ナダール、キャメロン、アッジェやアマチュア写真家たちのポートレート作品から。肖像画のように画家アングルをとらえたレネの写真。ナダールの女優マリー・ローランの背中。さまざまな民族や人種、あるいは囚人たちを資料として残す記録写真。当時流行した名刺代わりの小型ポートレート写真。そして数々のセルフポートレート。眠る自分、恋人と接吻する自分、影として写り込む自分。写真は写真であるがゆえの肖像をつくっていく。絵画の代用品として画家たちを脅かしたこの発明品を手に、撮影者たちは新しい表現手段としての潜在的な可能性にすぐに気がついたらしい。
 後半は「現代の写真」と題され、20世紀以降今日までの写真が続く。顔の片側だけをトリミングしたケルテスの女性像。イヴ・クラインの引き裂かれた女の顔。ライナーの潰された横顔。顔は断片となり、ひび割れ、崩れ、消える。これらの写真を「現代の写真」として大胆にくくっていいものか疑問が残るにしろ、被写体の忠実な再現が目的だった写真が、撮影者の内的世界を映すための道具になる過程は浮かび上がるといえる。(仙)

*国立図書館/リシュリュー館: 58 rue de Richelieu 2e(月休)1月11日迄


●Hans ARP (1887-1966)
白を生かした代表的な有機的フォルムの石膏作品。約20点。12/25迄
Galerie Nathalie Seroussi :
34 rue de Seine 6e
●Jan VOSS (1936-)

ハンブルグに生まれ、1960年以降パリで制作。”Remue-m始age” (大混乱)と題し、画面の一体性の破壊、カオス化。12/23迄
Galerie Lelong:13 rue de T刺屍an 17e
●中世期ロシア建築《写真》
11~17世紀に建てられたロシア教会を中心に、ロシア語学者トレモン教授が各地で撮影した写真約30点。1/3迄
トロカデロ図書館 : 6 rue C. Schloesing
16e (水土10h-19h/火木金13h-19h)
●Robert DELAUNAY (1882-1941) /
Sonia DELAUNAY (1885-1979)
1912年、アポリネールが「オルフィスム」と名付けた〈窓〉の連作から〈エッフェル塔〉、同心円シリーズまで、妻ソニアの作品も含め寄贈作品約100点。1/5迄
ポンピドゥ・センター(火休)
●REISER (1941-83)
ライゼールは、60年代の風刺雑誌《Hara-Kiri》から《Charlie hebdo》まで痛快な風刺画を発表。03年アングレーム・マンガ展での没後20周年記念回顧展作品約250点。1/19迄 ポンピドゥ・センター(火休)
●Jean-Michel OTHONIEL (1964-)

80年代以降、彫刻・デッサン・写真・ビデオをてがけ、93年からガラス作品を制作。”Crystal Palace”と題し、野外の木々に絡まる透明・半透明ガラスの巨大なネックレスやブレスレットが風と光のいたずらで千変万化。1/11迄(12h-20h 月休)

Fondation Cartier: 261 bd Raspail 14e
●森山大道 (1938-)《写真》
1961年、東松照明らの集団VIVO解散後、細江英公に師事。寺山修司の「天井桟敷」をとらえた「にっぽん劇場」(68)で日本写真批評家協会新人賞受賞。「プラットホーム」(77)から「新宿」(02)まで約200点。1/11迄 (同上)
●RODIN (1843-1917)《ユゴー》
1883~1916年、ロダンは晩年のユゴー(1889年死去)の大理石彫像を制作。ユゴー館100周年を記念し、ユゴーの胸像50点、デッサン30点、版画・写真。2/1迄
Maison de Victor Hugo :
6 place des Vosges 4e(火休)
●Jean-Honore FRAGONARD (1732-1806)
18世紀ロココの代表的画家。牧歌的風景や子ども、恋人たちを描いた風俗画は当時の日常風景を表している。水彩、デッサン47点。3/8迄 
ルーヴル美術館(火休) 
●Fernando BOTERO (1932-)
コロンビア出身、現在パリで制作。独特の豊満なフォルムの肖像画シリーズ、5年来の近作約100点。3/15迄(火休) 

Musee Maillol: 59 rue de Grenelle 7e


 

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