狂恋? 嫉妬? の悲劇。

 7月26日深夜、女優マリー・トランティニャン(41)が、TV映画『コレット』の撮影地リトアニアのビリニュスで、仏ロックグループ《ノワール・デジール》のカリスマ的作詞・作曲家・歌手ヴェルトラン・カンタ(37)に口論のはて殴殺された。カンタ容疑者は、年内にリトアニアで開かれる殺害容疑裁判のため現地の拘置所に拘留中。
 ロックと映画界の二大スターが引き起こした悲劇の衝撃は3カ月たった今も静まるどころか、10月上旬に発行された母ナディーヌ・トランティニャンの著《Ma fille, Marie》が娘の”殺害者”への恨みと憎しみをさらに増幅させ、トランティニャン・ファンとカンタ・ファンの対立を深めている。同著は14万部発行され、終始カンタが”殺害者”という名称で出てくることから、カンタ側弁護士は販売禁止を申請したが、裁判所は「判決が下るまで容疑者は推定無罪である」と記した小紙を以後、同書に差し込むことを出版社に命じただけ。
 名優 J・L・トランティニャンと監督ナディーヌ・トランティニャン(76年、アラン・コルノー監督と再婚)の長女マリーは、フェミニズムを体現したかのように3人の男性との間に4人の息子をもうけ、それぞれ離別後も兄弟のような関係を保つ。3人めの夫サミュエル・ベンシェトリ演出家の映画監督としての処女作《Janis et John》ではマリーが偽のロック歌手ジャニス・ジョプリンを、元夫フランソワ・クリューゼがやはり偽のジョン・レノンを演じ、父ジャン=ルイも共演。ジョプリンの役をこなすため、マリーが昨年7月にカンタの妹に紹介されたのがカンタだった。電撃の一目惚れ、カンタは10年来の同棲者クリスチナとの2人目の子どもの出生後、マリーのもとに走り、恋の虜になる。
 6月以降、ビリニュスを舞台にしたナディーヌ・トランティニャン監督による『コレット』ではマリーが主役を、彼女の長男ロマン(17)が主人公の義理の息子の役を演じ、弟ヴァンサンが助監督を務めている。トランティニャン一族が織りなす網の中に飛び込んだ、部外者カンタのマリーへの恋着の想いはつのるばかり。セット脇で待ち焦がれ、アパルトマンでは悶々と部屋の中を歩き回る日が続いた。
 7月26日、撮影の打ち上げパーティー後、マリーがサミュエルから優しい言葉で結ばれたメールを受けたことへの嫉妬に燃えたカンタは、激しい口論のはて「最後の言葉」のかわりにマリーの顔面を殴打、昏睡状態に陥らせる。カンタの電話で駆けつけた弟ヴァンサンは彼と話し込み、ベッドに横たわるマリーのはれあがった顔面を見て救急車を呼んだのは朝7時。マリーは7月31日にヌイイの病院に移されたが翌日息を引き取り、8月6日、ペール・ラシェーズ墓地で遺族ほか多くの映画人、芸能人、ファンに見守られて埋葬された。
 母ナディーヌは「愛は心を傷つけても殺しはしない」と、最愛の娘をカンタの暴力からかばいきれなかったことへの悔いと”殺害者”への怒りを、著書の一語一語に刻みこむ。そして家庭内暴力で月平均6人の女性が殺されているマッチョ社会に対して、娘マリーを”Fammes battues ぶたれ女” 協会のシンボルにすることもいとわないのである。(君)

《Ma fille, Marie》
Nadine Trintignant
Fayard 167p. 12euros

男性の暴力被害女性:年間150~200万人
53%   夫の暴力
35%   同棲者の暴力
17%   殴打、ビンタなど
11%   性的暴力 (強姦、性行為の強制)
23.5% 言葉による精神的暴力
*2000年、20~59歳女性6970人に対するアンケート。(Le Monde: 03/8/9)


 

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