テロ絶滅の十字軍?

 9月11日、米民間機をN.Y.の世界貿易センター・ツインタワーとワシントンのペンタゴンに激突させ、6千人以上の死者・行方不明者を出した同時多発テロ。数十分で超大国神話を爆破させた空前のテロをメディアはこぞって「神風、真珠湾攻撃」「21世紀のアポカリプス」と呼号、ブッシュ大統領は「善と悪の大戦」と断言し、テロ組織撲滅の “十字軍” の先頭に立つ。米大統領は、この一連のテロの首謀容疑者であるイスラム過激派指導者オサマ・ビンラディンとテロ支援国への報復攻撃にそなえ国家非常事態を宣言した。
 今日のイスラム過激派分子の世界規模の浸透を人体に潜む癌細胞にたとえれば、その発生母は、皮肉にも70年代からソ連アフガニスタン侵攻(1979 – 89)にかけて、イスラム国パキスタンやサウジアラビア王国で培養され米国が助成したといえる。米軍は対ソ戦力として多国籍アフガン・ゲリラ勢力を支援し、CIAは仲介役としてサウジ建設業億万長者の息子(兄姉妹52人の17人目)、ビンラディン(44)を雇い入れている。当然、彼はCIAの内部を把握している。ソ連軍撤退後、聖戦士ムジャヒディンはマグレブ、アフリカ、中央・南アジア諸国に帰還、またはコソボ紛争やチェチェンの内戦に合流。資金源(遺産、麻薬、投資会社・協会数百)と、国際テロ網を掌握するビンラディンを核に、彼らは親米国の米軍基地や大使館へのテロ活動と欧米都市でのテロ組織を密にしていった。
 そして94年アフガンにイスラム神学生の武装グループ “タリバーン” が登場、97年にほとんど全土を制圧。タリバーン政権はイスラム法シャリーアにより姦通に対する死刑から女子教育・女性の就労禁止、世界文化遺産バーミアンの仏像破壊へと文明を逆行する。”大サタン” (米国)と”小サタン” (イスラエル) を中東から追い出し、汎イスラム世界を目指すビンラディンは、96年以来全回教徒に「軍人・民間人を問わず米国人の殺害」を呼びかけ、「自爆テロは貧民の原子爆弾」とまで豪語する。
 タリバーンが90%を支配するアフガンで10年以来抵抗してきた反タリバーン派北部同盟の指導者マスード司令官(49、元国防相)が、米国での多発テロ2日前に2人の偽装ジャーナリストの自爆テロで重傷、1週間後に死亡した。マスード氏は8月にもEU諸国の支援を請うためパリとストラスブールを訪れたが米政府同様、誰も耳を傾けようとしなかった。マスード氏暗殺から米国での同時テロまでシナリオはSF以上の早さと規模で実行された。93年の爆弾積載トラックによる同センター地下爆破テロが実験段階だったように。
 東西対立終焉後、米国主導のグローバリゼーションでますます深まる南北の亀裂。その割れ目から噴き出しているのがイスラム後進国に充満する欲求不満と貧困、軍政腐敗であり、テロ分子の温床ともなっているといえよう。米政府は反テロ同盟国を超えた「テロ国際包囲網の形成」を目指すというが、21世紀が、南北=イスラム対西洋の憎悪の対立にならないか、もしやテロリストたちはそれを目標としているのではなかろうか。(君)


米同時多発テロ被害者(9/20日現在)

6333 死者・行方不明推定数
6100 ニューヨーク(62国籍)
米3500~4000 / コロンビア346 / チリー253
英250 / 印 200 /トルコ131 / フィリピン117
ロシア107 / カナダ60~100 / オーストラリア72
エルサルバドル72 / 伊57 / ブラジル55 / オーストリア40 / … 日24 / 韓19 / 香港17 / 仏10 / 台湾9 / 中7
189 ワシントン(ペンタゴン125 / 墜落機64)

44 ピッツバーグ(乗っ取り機墜落)

*Le Monde (9/19), Libération (9/22-23)