homme-grenouille
スーパーマンでもガッチャマンでもありません。カエル男! カエルが淡水の動物なら、カエル男は海水が特にお好みです。カエル男は、救助や捜索のために水中で仕事をする潜水夫のことです。イトコに “homme-sandwich(サンドイッチマン)” や “homme-orchestre(ワンマンバンド)” がいますが、彼らは地上で活躍中。スーパー・ヒーローは存在しない、なんて誰がいったんでしょうね?
19世紀から20世紀にかけてウマが交通手段としては時代遅れになり、ウマが登場する多くの言い回しもたちどころに古くさくなりました。しかし、いくつかは生き延びて、今でも会話の中で使われています。たとえば病気でひどい熱があると、”une fievre de cheval(馬熱)”。かんかんに怒ったり、高飛車な物言いをすると、”monte sur ses grands chevaux(大きなウマに乗っている)”。話し相手がつまらないことを口にすると、”j’en parlerai à mon cheval(ウマに話しておきます)”。映画のセリフは、コジツケ気味表現の宝庫です。”être à cheval sur…(ある分野でとてもきびしい、口やかましい)”という言い回しが、大ヒットした『大進撃』(1966年、ジェラール・ウーリー監督、ルイ・ド・フュネス主演)で出てきます。ラストに近いホテルのシーンで、女主人がドイツ将校を部屋まで案内し、そのホテルのベッドの寝心地の良さを自慢して「よくお眠りになれますよ。je suis très à cheval sur la literie!(私はベッドやシーツに関してはきびしいのです)」と叫ぶ。将校はさっぱりわけがわからず、「A cheval?!(ウマに乗る?!)」と聞き返す。すると女主人は「ええ、ベッドや寝具に口やかましいのです…」と答え、おたがいにちんぷんかんな会話が続いていきます。
「ヒツジ」に当たるコトバは “mouton(羊)”、”bélier(雄ヒツジ)”、”brebis(雌ヒツジ) “、”agneau(子ヒツジ)”と多様で、これらを使った表現も数多くあります。中でも “revenons a nos moutons(我々のヒツジのところに戻ろう)”が知られていますが、羊飼い特有の表現ではなく、15世紀のメートル・パトランの『笑劇』が元で、そこでは本当に「ヒツジ」のことでした。この表現は現代に残り、肝心の話題からそれてしまった会話を元に戻す時に使える、面白い表現です。レイモン・クノーは、この表現を “Mais revenons à nos mérinos(我々のメリノ種ヒツジに戻ろう)” と彼流に変えてしまいました。このスペイン原産のヒツジには、”laisser pisser le mérinos”というよく知られた表現もあり、「待つ」とか「成り行きにまかせる」という意味。福音書で「迷えるヒツジ」というと、罪深き人ですが、日常会話では、家族を捨てたり、社会の枠外で暮らすことを選んだりして、周りをハラハラさせる人のこと。結論:羊よ、羊飼いから離れるな!