comme un chien dans un jeu de quilles
イヌは人間にいちばん忠実な動物だといわれていて、イヌにまつわる表現は辞書で数ページにわたります! 感情面で人間に近いといわれながらも、扱われ方は同じではありません。それどころか、むしろ虐待されているといってもよく、人間は、日々のわずらわしさすべてをイヌのせいにしているかのようです。天候不順の時には、”il fait un temps de chien(イヌのような天気だ→ひどい天気だ)” と当然のごとくイヌが登場しますが、”il fait tres mauvais temps” という単調な言い回しよりは、ぐんと表情に富んでいます。”malade comme un chien(イヌのように病気)”というのは、病気が重い時です。みじめな生活を強いられている時は、”vie de chien(イヌの生活)” という具合です。まだまだイヌが出てくる表現は続きますが、イヌに好意的な表現はめったにありません。
“arriver comme un chien dans un jeu de quilles(九柱戯*の中のイヌのようにやって来る→都合の悪いときに現れる)” という言い回しも、よくよく考えれば、イヌが突然姿を現す時の不器用さと品の悪さを思い起こさせます。
コトバの上で、人間が動物に対する優越感を誇示しようとしても、忘れてはいけないことは、それがイヌにせよ、サルにせよ、ブタにせよ、ウサギにせよ、結局イメージでしかなく、問題になっているのは、常に人間なのです。
*ボーリングに似た遊戯。キーユ。
textes et dessins : Pierre Ferragut
翻訳 : 佐藤真