「反すう」が必要な95歳の巨匠の新作。 『Un film parle』


 豪華客船に乗って、寄港地の名所旧跡を、歴史の先生のガイド付きで訪ねる楽ちんな観光映画という一面もある『Un film parle / 語られる映画 』は、御年95歳、世界映画界の最長老、ポルトガルの巨匠、マノエル・ド・オリヴェイラの最新作。であるから、実は単純なようで複雑、易しいようで難しい、一筋縄では終わらない作品なのだ。見終わった後で “反すう”が必要になってくる。
 リスボンを出港する船の甲板に立つ母娘。ローザ=マリア(レオノール・シルヴェイラ:監督のミューズ的美人女優)は大学の歴史の先生。何でも知りたい盛りの7歳の娘を連れて、夫の待つボンベイまで船旅を決め込んだ。彼女自身、書物や文献で勉強しただけの知識としての歴史と文明を、この目で辿ろうというわけだ。リスボン、マルセイユ、ナポリ(ポンペイ)、アテネ(アクロポリス)、イスタンブール、カイロ(ピラミッド&スフィンクス)、アデン… と船は地中海を出て異文化の地へと航路を進める…。
 マルセイユではカトリーヌ・ドヌーヴ演じる女性実業家が、ナポリではステファニア・サンドレッリ演じる元トップモデルが、アテネではイレーヌ・パパス演じる女優で歌手が乗船して来る。彼女たちは、ジョン・マルコヴィッチ演じるアメリカ人船長のテーブルに招かれ、それそれの人生を、それぞれの国の言葉で語り「我々の言語は語源が同じだから通じるのねー」などと談笑しながらディナーを楽しむのである。そしてその後、まったくもって予期せぬ出来事が…。この衝撃のラストが象徴するものは…? それは各自に “反すう” していただくとして、枯れてるのか熱いのか分からないが、達観してることだけは確かな巨匠に、またもや「やられた!」って感じ。(吉)


 

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