14-15歳ごろから、互いを意識する若い男女は両親に隠れて付き合い始める。二人の恋に気づいた両親たちの承諾を得た後、1、2年当人同士の意思を確認する期間を経て、ジプシーたちの婚礼が成立する。新郎新婦はたぶん未成年だ。あどけない表情が痛々しく私の目には映るが、本人や家族は誇りに思っているに違いない。ジプシーにとって婚礼は大きなお祭りで、生演奏の音楽、踊り、飲食物、服装、すべてにお金と労力を費やすという。家族は新郎新婦をとりまき、歌い踊り、祭りの夜は更けていく。 大サーカス一家に生まれたアレクサンドル・ロマネスは、25歳でサーカスに嫌気がさし、両親の持つサーカス団を後にした。妻デリラとの出会い、ジャン・ジュネとの出会いなどがロマネスのサーカス熱に再び火をつけ、約20年後に自分のサーカス団Roman峻を立ち上げ、以後フランス中で公演を行ってきた。今回の公演は「婚礼」がテーマといっても、婚礼をきっかけに開かれる祭りに私たちが招かれる、という具合だ。音楽の調べにのり、シンプルで上質の芸が次々と披露される。綱渡り、空中ブランコ、玉投げ、フラフープのような輪の中での美しい踊り…。女性たちの芸が特に美しく、私たちは息をのみ、胸を躍らせ、手を叩き、歓声を上げる。スペクタクルが終ってテントから出ると、ヴィレット公園の空まで続く広い空間が心地いい。夏だもの、リラックスして流れる音楽に思わず体をスウィングさせたりして。8月23日迄。(海) |
*Parc de la Villette, Espace Chapiteaux |
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Dance | |
●映画館で、セーヌのほとりで。 Jussieuの大学の裏、セーヌ左岸のほとりには、夏のあいだサルサ、タンゴなどを踊りに来る人が集う。涼しい夕べのピクニックを楽しむ見物の人々も多いけれど、日の落ちる21時すぎ、サルサはもう陽気に盛り上がっていた。やがて暗くなるにつれ、緩やかにタンゴを踊り出す人々。明るいうちは基本のステップの講習もある。 現在公開中の映画『Quand je vois le soleil』(J・コルタル監督)で、元オペラ座プリマドンナで今はマルセイユ・バレエ団を率いているM-C・ピエトラガラが、歌手F・パニー(夫役)と共演している。その強い個性と表現力で型破りな存在。演じる役もダンサーであり、自らの死を悟った時の、母であり妻であり女としての葛藤。その激しくも切ないダンスシーンはさすが。(珠) |
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