●Filles uniques 片や予審判事、片や靴泥棒。裁判所で、〈裁く者・裁かれる者〉として出会ったキャロル(サンドリーヌ・キベルラン)とティナ(シルヴィー・テスチュ)には、互いに一人っ子だったという共通点がある。二人はいつしか絶妙なコンビで、アヌシーにあるカジノの偽コイン流通事件解決に乗り出すのだが…。 ピエール・ジョリヴェ監督は、『Ma petite entreprise』の時と同様、普通の人々の環境・心境の変化にまつわる悲喜こもごもを、テンポよく計算された台詞で描き出す。完成度の高い彼のコメディは、勢いだけで笑わせる駄目なおフランス産コメディとはっきり一線を画す。俳優陣はスクリーンの中でのびのびとみな気持ちよさそう。私は、監督のフェティッシュ俳優ヴァンサン・ランドンのとぼけた医者っぷりに思わずニヤリ。(瑞) |
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●Va et vient 1月にはモーリス・ピアラ、ついこの間はジャン=クロード・ビエットが心臓発作で急死するなど、映画界は大切な作家を次々と失った。ポルトガル出身のジョアオ=セザール・モンテイロも、この作品を遺し、2月にこの世を去った。私が一番好きな『La comedie de Dieu』(1995)以前から、モンテイロは自作自演で一人の謎めいた男の肖像を描き続けた。骸骨のようにやせた彼は、この作品でも相変わらずリスボンの街中を飄々と動き回る。魅了したり、反対に惹かれたりしながら、出会う女性たちと男女の営みだけには終わらない官能的な関係を築いていく。モンテイロは男女間の性にこだわり続けた。主人公は、おもちゃの巨大なペニスを体内に挿入したことで死を迎えるのだが、これはモンテイロ独特のユーモアで、自分の重い病を揶揄しているのだろう。ラストのロングカットはモンテイロの別れのあいさつだと皆がいう。64歳という若さで逝った彼が惜しく、私たちには寂しさだけが残る。(海) |
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●Le Mystere de la chambre jaune 『黄色い部屋の謎』。そう、この作品は有名なガストン・ルルーの推理小説の映画化。『Versailles rive gauche』、『Dieu seul me voit』、『Libert-Ol屍on』など、自分の出身地や幼少期からヒントを得て作品づくりをしてきたブルーノ・ポダリデスが、初めて大衆小説の映画化に挑戦した。とはいえ、誰もが子供時代に読んだ、という小説を選ぶところがいかにもこの監督らしい。地方にある城で起きた奇怪な事件を追って、タンタンのような新聞記者と敏腕警部が、謎解き競争を繰り広げる。監督の実弟ドニ・ポダリデスが相変わらず主役を演じ、P・アルディティ、S・アゼマ、C・リーシュなど、監督自身が敬愛してやまないアラン・レネ組に主演する役者たちで脇が固められている。美術も衣装も非のうちどころがない。凄い! という感動も驚きもないのが少し残念だが、上質の娯楽作品に仕上がっている。(海) |
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●7月の映画イベント 7月2日から15日まで、パリでは新イベント〈Paris Cinema〉が開催される。映画の大博覧会を標榜する本イベントは、パリと近郊の約30もの映画館を会場に、実験映画、子供向け映画、ドキュメンタリーなど多様なジャンルの作品上映がある。今年はイタリア映画回顧特集が目玉。全作4ロ均一料金。 また毎年外れのないプログラムで人気のラ・ヴィレット野外映画上映もお忘れなく。今年は7月8日から8月24日まで月曜を除く毎晩22時から無料上映。7月のお薦めは8日『アギーレ・神の怒り』、16日『バートン・フィンク』、17日『コーカサスの虜』、20日『監獄の記憶』。(瑞) |
*Paris Cinema : 08.2000.7575 www.pariscinema.org/ *Festival de cinema en plein air : 01.4003.7575 www.villette.com/manif |
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