静かなモンマルトルのアパート。 地下鉄PigalleあるいはAbbesses駅 。65m2。

 「うちは説明しにくい所にあるから近くまで迎えに行くよ」。モンマルトルに住むジャン=マルクさんとマリーさん、それに9カ月になるレオン君と落ち合ったのは、ルピック通りにある”アメリー・カフェ”。映画が大ヒットしたおかげで最近は観光名所となってしまったけど、昼前の時間帯は界隈の人が集まる庶民的なカフェだ。
 近況を交わしながらルピック通りを上り、横道にそれる。突き当たりの塀越しに木立がのぞく。彼らの住まいはこの中だという。重い鉄の扉を押し開けると、そこには外のにぎやかな下町光景とはうって変わり、緑に包まれた静かな空間がある。
 ここは19世紀末、当時流行していた第二帝政建築様式を駆使して造られたレジデンスだ。20世紀初頭には、地下鉄の駅名プレート製造で大儲けした資産家の手に渡ったこともある。敷地内には5、6棟のアパートやアトリエ、小公園が点在する。その一つに沿って細道(写真)を下ると、彼らのアパートがある建物に突き当たる。
 モンマルトルの丘の中腹というロケーションのせいもあるのだろう、4階の彼らの家には陽がサンサンと降り注ぐ。小鳥のさえずりに交じり、教会の鐘が時を打つ。のどかな時代のパリにタイムスリップしたようだ。
 南側に並んだ3部屋のうちの一つは、レオン君が生まれてから子供部屋に変身。ジャン=マルクさんたちは居間と隣接した部屋へ移動。ガラスをはめ込んだ折り畳み式の扉で居間と仕切られているのだが、目隠ししたい時はビロードのカーテンを引く。「劇場のカーテンみたいでしょう」とクラシックギター奏者のジャン=マルクさんはいう。マリーさんはリュート奏者という音楽家カップルだ。
 北側には台所とバスルーム。長い廊下がアパートの中央をはしる。ここに本棚が並ぶが、廊下の幅が十分あるので邪魔にならない。こういうスペースは貴重だ。
 訪問を終えると、「別の出入り口を見せてあげよう」との提案。彫刻の飾りを施した階段を下り、中庭を通り抜ける。そして正面の鉄格子の扉を開け一歩外へ出ると、そこはクリッシー大通り。セックスショップ街のど真ん中でした。(秀)


古い歴史を持つ映画館。
 子供が生まれると、どの家庭でも親が外出する機会がめっきり減ってしまう。でも、映画を見ることに関しては、ジャン=マルクさんたちは恵まれた環境にある。アパートから歩いてほんの3分の所に映画館〈Studio 28〉があるからだ。近所の人にレオン君を預けて、好きな映画を見に抜けだせる。
 この映画館は由緒ある歴史を持つ。モンマルトルが芸術家たちでにぎわっていた時代の1928年に開館。当時はアバンギャルド作品が上映され、ジャン・コクトー、ルイス・ブニュエル、アベル・ガンスらが通ったという。上映ホールを飾る照明はジャン・コクトー自らのデザインによるものだ。
 現在は話題作を週7、8 本上映。ハリウッド系娯楽ものより、粒ぞろいの佳作が選ばれている。火曜は封切り間近の映画の試写会、水曜は子供向けのプログラム、日曜は名画のリバイバル、と豊かな内容で構成されている。(秀)

*Studio 28: 10 rue Tholoze18e
01.4606.3607


 

パスワードをお忘れの場合、OVNINAVI.COMに登録したE-mailアドレスにパスワードをお送りします。登録E-mailアドレスを入力してください。


戻る