イスラムの女性が、コーランの教えに従って被るスカーフ(ヒジャブ)が、また政治問題としてメディアに引きずり出されました。4月19日から21日まで ル・ブールジェで開催されたフランス・イスラム団体同盟(UOIF)の集会を訪れたサルコジ内務相が「イスラムの女性も、身分証明写真ではスカーフをとる こと」と発言し、会場からブーイングを浴びたのが、今回のスカーフ論争再燃の原因です。
公立学校内、特に教室内でイスラム女子学生がスカーフをつける・つけないの論争は、1989年9月、オワーズ県の公立中学校の教室でスカーフをつけた3人の女生徒が「公立学校の非宗教性」に反するとして、教室外に出されたことに端を発します。以後13年間、スカーフ論争は「公立学校の非宗教性」と「違いの権利」とに挟まれ、職場でスカーフをとらない女性が解雇されるケースも報じられるようになりました。
女性たちにスカーフを被るようになったきっかけを訊ねると「メッカに巡礼に行ってから」「夢に見た」「忘れた」など様々で、身分証明写真に関しては「スカーフはとる。法律ですから」と、パリ4区にあるエルサレム修道会のシスターと同じ答えだった。
夕方の祈りにモスクに来たホリアさん(68歳)のジャケットはなめらかな絹。白地に紺の大柄な抽象模様。足まで隠れる白いスカート、その下にプリーツがかかった白いパンタロン。スカーフはジャケットに合わせて白地に紺の抽象柄。シャネルのハンドバッグに「眼鏡はニナ・リッチ」のお洒落マダム。
「イスラムの女性はずっとスカーフを被ってきたし、この世の終わりまで被り続ける、ただそれだけのこと。スクープ探しのメディアが騒ぎすぎなだけ」
エジプト出身で在仏25年のアファフさん(43歳)。スカーフはエジプト製の職人芸がとことん発揮されたイスラム・スカーフから、セリーヌ、エルメスの四角いものまで100枚は持っているそうです。「30歳のときコーランの教えに従おうと決めました。それ以来、毎日スカーフをつけています。エジプトでもフランスでも、以前よりスカーフをつける若い女性が多いのでは?」という。
経済学の博士論文を書く学生さん(29歳)は、「物質主義的な今の世の中、外見はとても大切にされる。自分は身体が発する魅力ぬきに存在できるのか? と疑問に思った。スカーフをつけることによって、外見的な魅力なしでも自分が存在できるとわかったの。物質的なこと、外見的なことから自由になれた」と語ってくれました。(美)
モスクのなかで。