ヨーロッパで初のアメリカ人写真家ト−マス・ブルーメット(1955-)の作品展。”Desart series”(2002)、”Rethinking the Natural”(2002)、”Diatom series”(2003)の三つのシリーズが展示されている。 アリゾナを旅しながら撮影したという”Desart series” では、サボテン、花、木の枝にとまる鳥などを周囲の風景から切り離し、大きな画面に引き延ばしている。滲み出したように浮き上がるモノクロームの生物は、それぞれが自分自身の物語を静かに話しているようだ。”Rethinking the Natural” は、花や果実などの自然物を一枚の写真に一つずつクローズアップしたシリーズ。整然と、しかし詩的に、被写体が自分の姿をさらしている。 これらの作品をブルーメットは、従来の写真技術と現代の最新技術の双方を用いて制作した。撮影した写真をまず印画紙に焼き付け、脱色、さらに着色する。偶然の力を借りながら手作業で行われる画像は二度と同じものは得られない。次に、このたった一枚のオリジナルをスキャナーにかけ、アイリスプリントという方法でプリントアウトする。これは紙をシリンダーに巻き付けて、その表面に植物性インクを霧状にして高圧力で吹き付けるというものだ。一辺が2メートル近くもある大きなプリントは、細かな点描画のようにオリジナルのニュアンスまでを正確に再現している。この画像は従来のプリントよりも長期間の保存に耐え得るのだという。しかし、写真の中の脆くはかない生き物たちは、自分の物語を話し終えたらすっと消え去ってしまいそう。 新しく制作された “Diatom series” は、19世紀のカラープリント法を改良して制作したシリーズ。珪藻(単細胞の藻類)の顕微鏡写真を、重クロム酸を含んだ着色ゼラチン層を感光させて作る画像で、透明感のあるカラー作品に仕上げている。 繊細な芸術家と端正な科学者の目を持つブルーメットの写真は、夢幻の世界の博物図鑑のようだ。普段は聞こえない生き物たちの本当の声が聞こえてくる。(仙) |
Galerie Karsten Greve: 5 rue Debelleyme 3e 01.4227.1937 6月30日まで |
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“Voyage en Iboga” 「イボガの旅」は、アフリカのガボンで行われているシャーマンによる「ブイティ」と呼ばれる通過儀礼の様子。イボガという葉っぱは、脳を活性化する向精神性のドラッグで量によっては、危険な聖葉(秘薬)。このドラッグによって解放された精神の状態で儀式が行われる。日本でも遥か昔から伝わる丹生(にう)と呼ばれた水銀、ベニテングダケ、マッシュルームを食べるバリ島ツアーなんていうのもこの変成意識状態を求めたものだろう。 このイボガの旅は、ガボン人ピグミーのンガンガ(魔術師)のガイドで、いわゆる超自然現象や臨死体験、心身離脱のようなちょっとスリリングな旅であるという。この通過儀礼を受けた二人の旅行者=アーティスト〈Art Orient objet〉は、人間が操作する自然や、その影響、現象をアートとして表現してきた。それは常に二元的な西洋文化思想への、そのグローバル化への警報だ。かつてンガンガが来仏した時の目的は「西洋世界を救う」だったのだ! 1989年のポンピドゥセンターの “Les Magiciens de la terre”、2000年リヨンの “Partage d’Exotismes” のようなテーマが、未開へのファンタズムや白人のエキゾチズムだ! と単純にはいいがたいが、21世紀問題は「心」がアートのテーマになる…といわれて久しい。(麦) |
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●<De Caillebotte a Picasso> 新印象派、フォーヴィスム、キュビスム、19世紀末から20世紀前半の芸術の流れが一望できるオスカー・ゲッツ(1870-1950)コレクション。カイユボット、ルノワール、マネ、ゴーギャン、デ・キリコ、ドラン、ピカソなど85作品。6/15迄 Musee Jacquemart-Andre 158 bd Haussmann 8e ●Jean FOUQUET(1415頃-1478/81) フランス15世紀を代表する画家ジャン・フーケ。フランドル美術とイタリア美術の影響を受けた作品は当時のフランス絵画を根底から改革した。6/22迄 国立図書館リシュリュー館: 58 rue de Richelieu 2e(月休) ●Nicolas de STAEL(1914-1955) 厚く塗り込めた絵の具による独特な空間。ニコラ・ド・スタールの作品約200点。 ポンピドゥセンター 6/30迄(火休) ●<Picasso, papiers journaux> 新聞や雑誌など印刷物を使ったピカソ作品。1912-14年キュビスム時代のパピエ・コレや、シュルレアリスト的作品、習作も含む戦後の作品まで。6/30迄(火休) Musee Picasso: 5 rue de Thorigny 3e ●<L’aventure de Pont-Aven et Gauguin> 1880年代ブルターニュのポン=タヴェンに若い画家たちが集まった。ベルナールの単純化した縁取りと平面的な色使いはゴーギャンに影響を与えた。ゴーギャンの抽象的な色彩はセリュジエに影響を与え、彼は後にパリでナビ派を形成。相互に影響し合い、新しい芸術を織りなしたポン=タヴェン派の画家たち。6/22迄 Musee du Luxembourg: 19 rue de Vaugirard 6e ●<Le corps en scene> ナムジュン・パイクのパフォーマンスやマース・カニングハムの舞台のビデオ、ゴルチエの衣装、ビョークのビデオクリップ、空間を共有する肉体と音楽をテーマとする作品を集める。7/13迄 Musee de la Musique: 221 av. Jean Jaures 19e(月休) ●<Ming, l’age d’or du mobilier chinois> 16-17世紀、明朝の時代に作られた家具100点。7/14迄 ギメ美術館: 6 place d’I始a 16e(火休) ●<Leonard de Vinci, dessins et manuscrits> レオナルド・ダ・ビンチの初期から晩年までのデッサンを多数展示。 5/9~7/14迄 ルーブル美術館(火休) ●<De Cesanne a Dubuffet, collection Jean Planque> ジャン・プランクのコレクションから、セザンヌ、ブラック、クレー、ルオー、タピエス、ド・スタール、デュビュッフェ、ピカソなど19~20世紀の50人の画家の作品170点。7/27迄 Hotel de Ville/Salle St-Jean: 5 rue Lobau 4e(月休) |
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