19世紀の劇作家ウージェーヌ・ラビッシュの三戯作が三部構成で上演される、という面白い試みだ。 はじめの『Mon Ismegie!』では、男手ひとつで育てた一人娘を溺愛するあまり、娘の求婚者を追い出してしまう中年男の悲哀が皮肉たっぷりに描かれ、次の『Le Dossier de Rasafol』では、裕福な女性と再婚した男の家に、男の前妻が新しい小間使いとして雇われたことから起こる騒動が描かれる。そして三作目『Les Suites d’un premier lit』の主人公は男盛りで男前、なのに亡き妻が残した娘のせいであらゆる再婚話を棒にふっている。どうすればこの娘から解放されるのだろう? 三つの異なる劇を一つの舞台にするための何か共通のテーマがあるとすれば、「人間の葛藤」が挙げられる。一作目では父と娘の間の愛情の中に、二作目ならば美しい前妻と裕福な妻の財産の間に、そして三作目は義理の娘と自分の幸せを秤にかけながら、この「葛藤」は存在する。ただ、喜劇の名手ラビッシュの手にかかると、「葛藤」といっても眉間に皺寄せ悩むのではなく、すべてが早口のおしゃべりに取り込まれていく。それぞれは他愛ないようでも、他人の悩みだから軽く笑って済まされるということもある。人間っていうのはいつの時代も、こすっからくケチなことで悩んでいるものだなあ。自由自在に動かせる舞台美術も、各回必ず最後に登場する合唱も、作品をテンポよく軽やかに仕上げるのに役立っている。演出はアンヌ=マリー・ラザリニ。(海) |
*Theatre Artistic Athenains : 45bis rue Richard Lenoir 11e 01 4356. 3832 |
●Les Braises 40年ぶりに旧友を招いた夜、そわそわと落ち着かない様子の男主人を年老いた召使は意味ありげに慰める。そして旧友の到着。二人の男の会話は次第に昔の思い出、特に男の妻へと話題が移る。男は、旧友が妻の愛人だったと疑い続け、真実を明かそうとこの日を待っていたのだ。 ハンガリー人作家マーライの小説をS・コーチと役者C・リッシュが舞台化した。リッシュは没落貴族の気品とプライドを見事に演じ、B・ヴェルレーは朴訥さの中にエレガンスをちらりと光らせながら、冒険家だった旧友役で見事に対決する。動きの少ない心理劇に私たちがひきつけられるのは、やはり二人の役者が発する磁力のおかげだろう。そしてこの二人に愛された女性って誰よ?と妬んでしまう。演出はディディエ・ロング。
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* Theatre de l’Atelier :1 place Charles-Dulin 18e 01.4606.4924 |
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Dance | |
●Sankai Juku《 Kagemi 》 ー鏡(たとえばそれは)の彼方ー 山海塾を率いる天児牛大は言う。「踊ること、それはいわば重力と対話することであって、重力なしには、起き上がり、立ち、動く、すべては不可能であるのだから」 生物としての身体のありかた、それは原初的な、例えば呼吸、そして立つこと、在ることの意識から始まり、身体、そしてそれを超えるものへの探究、精神の昇華。「身体は大地の力強さを受け、そこに精神はまもられる」。対話は続いていく。「ひとが生まれでる以前、生物の創世紀からも繰り返されている営み」、永久に流れる時間が現れ出る舞台という暫時空間に、空間造形、音楽、身体は対峠する 。(珠) |
19日~22日/20h30 15 – creation 2003 : 4/22~25(20h30) – Kagemi : 4/30、5/2、3( 20h30) 5/4(15h) いずれも16€/25€ *Theaeatre de la Ville : 2 place du Chatelet 4e 01.4274.2277 |
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