仏映画にありがちなダメ男が主人公。 『Petites coupures』

 ダメ男くん? いい年してまだ腰が据わってない男、煮え切らない態度で複数の女の間をふらふらしている男、最後はちょっと自虐的、自嘲的になって、みっともない姿を惜しげもなく晒してしまう露悪趣味な男…。これってフランス男にありがちなタイプでしょうか…? 少なくともフランス映画にはありがちな男のタイプですねー。
 映画の冒頭のエマニュエル・ドゥヴォスとリュディヴィーヌ・サニエ、今ノリノリの女優二人が演じる女の出会いが傑作である。この二人、ダニエル・オートゥイユの妻と愛人なのであるが、そうとは知らずに街角で交流してしまう。オートゥイユ君は今時コミュニストでジャーナリストであるが、経済面の援助を叔父のジャン・ヤンから受けている。この変わり者の叔父が住む田舎へ向かったオートゥイユ君、叔父から使いを頼まれてさらに人里離れた森の奥のミステリアスな豪邸へ向かう。そこで彼を出迎えたのはハイソなムード満々の美女、クリスティン・スコット=トーマス。冷たいのか熱いのか? 本心なのか遊戯なのか? 誠か嘘か? この謎の女にオートゥイユ君はすっかり翻弄されてしまうのだった…。
 少々サスペンスな味付けを加えたコメディー。フランス映画ならではの作品。リヴェットやテシネの脚本家として高名なパスカル・ボニツェールの『Encore』『Rien sur Robert』に次ぐ3本目の監督作品。ボニツェールは本作『Petites coupures/ 小さな傷』で、トリュフォーやらロメールやら、フランス映画伝統の良い部分の正当な後継者であることを立証した感がある。いつでも巧いD・オートゥイユだが、ダメ男の魅力に関してはイマイチだ。でも、C・スコット=トーマスの超好演で救われている。(吉)