クラシックを見直してみよう。

●Le Tartuffe
 えせ信者に入れあげて全財産を失いかけた金持ちの男が主人公、ときけば、こんどはどの新興宗教の話?とお思いかもしれないが、これはモリエールが1664年に初演した舞台劇『タルチュフ』の筋。ルイ13世や貴族たちの支援を得ながら力をつけ、当時世論を騒がせていた宗教団体とその信者たちを、モリエールはこの劇の中でみごとに揶揄した。ただ、そのあまりにも「宗教を冒涜している」内容が大衆に与える悪影響を懸念したルイ14世は、この舞台を早々に禁止。一般に公開されることが許されたのは5年後のことだった。
 シェイクスピアの劇もそうだが、モリエールの劇には、古典とはいえ現代にも通用する新しさがある。それは彼らの劇が人間の普遍の本質を描いているからだ。
 金持ちのオルゴンは路頭に迷う男タルチュフの信心深さに心をうたれ、タルチュフにすべてを捧げようとする。オルゴンの心は果して潔白だったのか? 完全な人間はいない。善と悪とは隣り合わせ、善がなければ悪も存在しない。宗教をふりかざしながら他人の弱味につけこみ、私腹をこやさんとする人間のあざとさや偽善心の傍らに、他人への思いやりや正義感がある。金持ちオルゴンを演じるベテラン、レイモン・アクアヴィヴァや猜疑心の強い召使を演じるスリーズを始めいい役者が揃っているのに加えて、古典劇をシンプルに見せようとしたエドワール・プレテの肩の凝らない演出が、舞台美術、衣装、照明にも反映されていて、好感が持てた。3月2日まで。


*Nouveau Theatre de Mouffetard:73 r. Mouffetard 5e 01.4331.1199. 
火-土/20h30 日マチネ/15h30
15.50€/21.50€
●Phedre
 1677年に初演されたラシーヌの古典劇『フェードル』をひっさげて、国立オデオン座が1月15日、クリシー門の近くに新しい演劇空間Ateliers Berthierを開いた。倉庫のようなだだっ広いスペースはもともとオペラ座の舞台装置の一部を保管するために使われていたのだという。劇場のこけら落としというだけあって、7年間ぶりに舞台演出にカムバックしたパトリス・シェローを迎え、主役のフェードルにはドミニック・ブラン、夫のテゼ王にはパスカル・グレゴリー、テゼの息子イポリットにはエリック・リュフ、イポリットの後見役テラメンにはミシェル・デュショソワと豪華な顔ぶれが揃う。
 義理の息子へ狂おしいほどの恋慕を抱くフェードルと、妻を息子に寝取られたと嫉妬を燃やす夫テゼ…殺風景な舞台空間を寄っては離れ、離れては寄り…体中で演技をする役者二人の間にぴりっとした緊張感が張りつめ、私たちまでギリシアの神殿にいる錯覚におそわれる。役者の圧倒的な存在感(ドミニック・ブランは本当に素晴しい)と演出の魔力がここにはある。2時間半の間、女の魔性が生んだ悲劇に酔いたい。4月20日まで。(海)
*Odeon – Ateliers Berthier :8 bd Berthier 17e 01.4485.4040 火-土/20h
13€-26€(前売りは電話予約のみ)

Dance
●Emio Greco/PC《 Conjunto di nero 》
 「静寂のなかに身体を探し求め、薄明かりのなかでそれを見なければ。内か外かもわからないところで、視力聴力の限界を突き破るように」。過去に、Jan FABREや勅使川原三郎の作品にも参加したイタリアのダンサーEmio Grecoとオランダの演出家Pieter C.Scholtenのコラボレーション三作目。
 「黒のアンサンブル(衣装)」というタイトル。振付・演出から衣装・照明まで、知覚の身体性をミニマルながらも何か、動物である人間の身体のエロスを感じさせる舞台空間を創ってきた。「様々な経験からわきあがる感情や感覚を呼び起こすこと、それは時にある色になる」「身体が増幅していく感じ、私自身をおもしろがっている」(珠)
4日~8日/ 20h30 15€
*Theatre de la Ville :
2 place du Chatelet 4e 01.4274.2277