11月23日よりパリ日本文化会館にて日本文化に関するドキュメンタリーが特集上映される。その中で注目したいのは、山形県で生産される干柿の生産過程を、農民の表情とともに描いた『満山紅柿』。三里塚シリーズや『1000年刻みの日時計』の巨匠・故小川紳介監督が残したフィルムをもとに、氏の意志を引き継ぎ、彭小蓮が完成させた作品だ。 今年8月に目利きのプログラムで名高いアルデッシュ地方のリュサス映画祭が小川紳介特集を企画し、パリより一足先に本作を紹介した。映画祭期間中に、小川作品の案内人として、そして自作『花子』、『Self and Others』の上映で来仏中であった佐藤真監督に、小川紳介と日本ドキュメンタリーについて話を伺った。 「小川紳介は土本典昭とともに日本ドキュメンタリーの潮流を築いた人。彼は話しながら考える “語り” の人で、『満山紅柿』もそうだが、多くの作品でナレーションをし、姿も現す。だから作品はまさに彼の息がかかっている。彼は数年にわたり無償のスタッフとともに集団生活をしながら村に住み撮影をしてきた。現在、小川プロのような撮影スタイルは不可能になったと思う。彼の作品を乗り越えるには、後の世代が違うスタイルの作品を作らなければならない。彼は1992年に56歳で亡くなるが、日本はもとよりアジアの若い監督たちに多大な影響を与え、世界的に評価の高い山形国際ドキュメンタリー映画祭の設立に寄与した。 1990年代以降、日本でもドキュメンタリーが多く劇場公開され始めた。ただ、今だにドキュメンタリーを “戦後民主主義的文化映画” と捉える傾向があるのは問題だ。『妻はフィリピーナ』以降、自分探し映画も脈々と続く傾向のひとつ。ドキュメンタリー制作を通して他者と出会い、もっと自分の無知を知らされることが大事だと思うのだが…。中国も韓国も自分探し映画は多いが、徴兵制があるので自然と国家や社会の問題にぶつかっている。映像作家にとっては徴兵制があった方がいいのかもしれない(笑)」(聞き手 : 瑞) |
*日本文化会館ドキュメンタリー週間は
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●映画館で上映中のドキュメンタリー スナイパー事件で、妙にタイムリーな『Bowling for Columbine』。斬り込み隊長マイケル・ムーアが銃社会に啖呵を切る傑作。一方、メディア界の浅薄さを浮き彫りにする誠実な危険分子ピエール・カルルの『Enfin Pris?』や、可愛いお子様パワーでしぶとく大ヒット中の『etre et Avoir』もお見逃しなきよう。(瑞) |
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