パン屋さんのふつうのお菓子たち

シュー生地を使ったお菓子—ところが肝心なシュークリームが見あたらない!?
●エクレール éclair /ルリジューズ religeuse
エクレアは仏語ではエクレール(稲妻)。「これがなんで稲妻?」と思う人も多いでしょう。稲妻がピカッと光るあいだに食べられる食べやすい形をしているから、一瞬で食べてしまわないとクリームがこぼれるから、形が稲妻を思わせるから、などさまざまな説がある。考案者は天才料理・菓子職人アントナン・カレーム(1783 -1833)。ルリジューズは「尼僧」という意味。その名のごとく尼僧の姿を形どったお菓子。大小のシューのつなぎ目に白いバタークリームでデコレーションがほどこしてあり、これが修道服の純白の襟を表わしている。エクレア同様、チョコとコーヒー味の2種類あって、シューの中にそれぞれの味のカスタードクリームが詰まり、甘いフォンダンがかかっている。


 


●サン・トノレ Saint-Honoré
サン・トノレは、パン・菓子職人の守護神「オノレ聖人」のこと。19世紀にパリのサン・トノレ通りに店を構えていたシブスト氏の菓子屋で産声をあげたのだから、地方菓子にあらず生粋のパリジャンだ。パイ生地の上にシューをリング状に絞り、カラメルをかけたプチシューとクリームでデコレーションした、見た目にも上品なお菓子。本来、シブスト氏考案のシブストクリームを詰めるのだが、このクリームは作り方が複雑で日持ちしないので、今ではシャンティーがほとんど。考案者は、シブストの弟子で、のちに彼の店をとりしきったオーギュスト・ジュリアンだ。



●パリ・ブレスト Paris-Brest
1891年に始まったパリーブレスト間自転車レース。その第一回を祝して作られたのがこのお菓子。コース沿いにあった有名な菓子屋が、自転車の車輪をまねてシュー生地をリング状に絞り、スライスアーモンドをたっぷりとふりかけて焼き、中にプラリネクリームを詰めて売り出したのだそうだ。最近は作りやすさを優先してか、シューを棒状に焼くお店もちらほら。確かにリング状に絞るのって棒状よりも時間がかかるし、一度に沢山絞れないので不経済なのかも。車輪の形じゃないと意味ないのに…。でも形は変われど、こうばしいナッツの香りは健在です。


●ディヴォルセ divorce/ グラン gland/ サランボSalambo
ディヴォルセは、「離婚した人」という意味。チョコとコーヒー味のクリームを一度に楽しめ、エクレア2本買うよりも絶対お得。最近ではシビアな響きを避けるためか “Duo” というかわいい名前で売っている店もある。グランはどんぐりのことで、名前通りなんとも愛嬌のある形。でもグリーンのフォンダンに、店によっては多量の着色剤を加えているところもあり、買うのにためらってしまう。サランボ(フローベルの小説のタイトル)は、グランの兄弟分で、シュー生地をおいなりさんのような形に絞る。丸でもなく棒でもないその微妙な形を絞り出すのは結構難しい。表面はカラメル。グランもサランボも、どちらもキルシュやラム酒などをきかせたカスタードクリーム入り。





●シュケット chouquette
シュー生地に白い砂糖粒をふりかけて小さく焼いたのがシュケット。量り売り。1個からだって買えるが(いやな顔されるだろうが)、ひとつかみとか100g単位で買っていく。



焼き菓子
—歩きながらでも食べやすい。

●サブレ sablee/リュネット lunettes
サブレは「砂 sableのようにサクサクした」という意味のクッキー。草加せんべいよりもビックなサブレにビックリする人も多いはず。プレーン、ナッツ入り、チョコレートがけとその種類もいろいろ。タルトの台などに使われるサブレ生地Pate sableeというと、シュクレ生地 Pate sucréeよりも、バターを多めに使った生地を指し、いうまでもなくサブレ生地の方がよりサクサクしている。サブレの出身地は、上質な乳製品の産地ノルマンディー地方だ。
リュネットは、2枚のサブレのあいだにフランボワーズ(ラズベリー)のジャムをはさんだクッキー。2つの穴から真っ赤なジャムがのぞいているのでリュネット(めがね)。なんともわかりやすいネーミングだ。日本だと、お菓子に入っている赤いジャム=いちごだが、フランスでは、赤いジャム=ラズベリーという場合が多い。




●フィナンシエ financier

ラ・ブルス(証券取引所)近くの菓子屋が、背広をよごさずに食べられるようにと考え出した。その形は、札束や金塊を思わせ、その名もフィナンシエ(相場師)。手にベタベタつく脂さえ気をつければ、サブレやマドレーヌのように菓子くずがほとんど出ないスマートなお菓子だ。でもこれって大量にあまってしまう卵白を処理したかったパン屋・菓子屋の陰謀のような気もするが…。卵白が淡白なかわりに焦がしたバターを入れて香りを補うのがポイントです。



●パルミエ palmier
日本でも、源氏パイという名前で親しまれているパルミエは、画家マチスも大好きだったという。サブレ同様、ただその大きさに驚く。子供の顔よりも大きい場合だってあるのです。椰子の木の葉っぱの形に焼き上げたというパイだが、椰子の木を連想させる? ハートパイとかもっと分かりやすい名前にしてほしいと思いませんか?



●コンゴレ congolais
菓子作りにはとにかく卵黄をよく使う。(その代表がカスタードクリームだ)だからどうしても卵白の処理に困るというわけで、卵白に砂糖とアーモンドパウダーを加えて焼いたものがマカロンなら、卵白に砂糖とココナッツパウダーを加えて焼いたものがコンゴレ(コンゴ人)。その形からロッシェ・ド・ココ(ココナツの岩)と呼んでいるところもある。店によって形もいろいろで楽しい。


 メレンゲ菓子—口の中でシュワッと溶けていく。
●メレンゲ méringue
卵白をしっかりと泡立てると、空気を含んで真っ白になる。そこに砂糖シロップを入れてさらに泡立てたものがメレンゲで、仏語ではムラング。メレンゲと一口にいっても、フランス風、スイス風、イタリア風と、作り方が異なる3種類のメレンゲがあるが、生地やクリームに入れたりデコレーションに使ったりとその用途はいろいろ。メレンゲを絞り出し、焼き色がつかないように低温のオーブンで一晩乾燥させたものが、パン屋の店先に並んでいる。シャンティーやバニラまたはコーヒーのアイスとの相性は抜群だ。



●テット・ド・ネーグル tête de nègre
ドーム状に焼いたメレンゲふたつをガナッシュではり合わせ、表面にもガナッシュを塗って、チョコスプレーをまぶしたテット・ド・ネーグル。最近は「黒人の頭」というちょっと人種差別的なネーミングを避けて、ブール・ド・ショコラ(チョコボール)と呼んでる店も多い。バタークリームで張り合わせココナッツパウダーをまぶした真っ白いブール・ド・ココもある。


  リサイクル菓子—パン屋の知恵が生み出した。
●ディプロマット diplomate
レーズンやチェリー、アンゼリカの砂糖漬けなどと、フィンガー状に焼いたスポンジをほぐして、ババロワ液で冷し固めた上品なプディングは、「外交官」という名にふさわしい高貴なお菓子。冷たいカスタードソースと一緒に供される。でもパン屋さんのディプロマットは、ブリオッシュやケーキ生地などの切れ端をプリン液(卵、砂糖、牛乳を合わせたもの)にほうり込んで焼くプディング。つまりリサイクルケーキなのだ。白っぽい生地をほうりこんで焼いたプディングがディプロマット、ココアなどが入った黒っぽい生地で焼いたものがプディングと呼ばれて売られている。高貴でなくても倹約の精神にもとづいた優秀なお菓子だということをお忘れなく。



●フィーグ figue
一見和菓子にも見えるこのお菓子は、ときどきブタやじゃがいもの形になったりもするが、フィーグ(いちじく)の形が一番ポピュラーだ。切ってビックリ!これもリサイクルケーキのひとつ。ディプロマットとは若干作り方が異なり、残った生地にフルーツの砂糖漬け、クリームやお酒のきいたシロップを加えてぐちゃぐちゃにつぶして丸めてから、見かけのわるさをマジパンで覆い隠したものです。マジパンで包むことで乾燥からも防げる。



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