根強い人気のクラシックなお菓子—リッチな味わいにきっと満足できるはず。
●ミル・フイユ mille-feuille
フランスのパン屋で「アン・ミル・フィーユS.V.P」と言っても、きっと通じない。だってミル・フィーユ mille filles
だと千人の女の子って意味になる。カタカナ表記は難しいが、「ミル・フイユ」と発音します。千枚の葉というなんとも詩的な名前はパット・フイユテpate feuilletéeとよばれるパイ生地からきている。そのサクサク生地のあいだに生クリーム入りのカスタードをはさみ、上にはフォンダン*か粉砂糖。フランス人も悪戦苦闘して食べています。*糖衣のこと。
●ババ baba / サヴァラン savarin
一般的に大きなシャンペンの栓のような形がババ、リング形の中にシャンティー*やカスタードクリームを絞った方がサヴァランと呼ばれている。生地はパンと同じイースト発酵で、卵やバターも入るブリオッシュの親戚みたいなもの。シロップがしみ込みやすく、かつベチャっとならないように、ブリオッシュよりも生地の目が密でしっかりしている。ババは、18世紀にポーランドのスタニスラス・レクチンスキー公がその原型を考えだした。大好物のクグロフがパサパサだったため、お酒をかけて(マラガ酒とラム酒の2説ある)食べたところとてもおいしかった。そのおいしさに感激した彼は、愛読書だった『千一夜物語』から「アリ・ババ」の名前をつけたそうだ。*砂糖を加え泡立てた生クリーム。サヴァランは、1826年に亡くなった『美味礼讃』の著者ブリヤ・サヴァランをたたえて、1845年にオーギュスト・ジュリアンが考案したといわれている。
●アマンディーヌ amandine
りんごのタルト、レモンのタルト、チョコレートのタルト…数あるタルトの中でも元祖といえばアマンディーヌ。シュクレ生地にアーモンドクリームを詰め、スライスアーモンドを散らして焼きあげた黄金色のタルトだ。1638年に菓子職人ラグノーが考案(お菓子の中でも最年長)。当時はセドラ(レモンの一種)の汁やアーモンドミルクなども入れていたらしい。
●バルケット barquette
バルケットは小舟のこと。舟形の型にシュクレ生地とアーモンドクリームを詰めて台をつくり、その上にバタークリームをのせる。クリームは栗のペースト入りのバタークリームが最もポピュラーで、バルケット・オ・マロンという。街なかのパン屋では、モンブランよりも一般的な栗のお菓子。これがコーヒー味のバタークリームだと、バルケット・オ・カフェと呼ばれることになる。
●フラン flan
フランには、塩味のものもふくめ、いろいろな種類があるが、パン屋さんで売られてるフランは、パイ生地にプリッとした弾力のあるカスタードを流し込んで焼いたお菓子。値段が安く腹持ちがいいので、フランスの、特に男の子に人気。
お菓子に使われるさまざまな生地
シュー生地 pâte à choux
カトリーヌ・ド・メディチのお輿入れと共にもたらされたイタリアのシューが改良されパッタ・ショー(熱い生地)と命名された。さらにジャン・アヴィス(通称ル・グラン)がそれまで揚げていたパッタ・ショーを焼いてみたところ、焼き上がりの形がシュー(キャベツ)に似ていたので、パッタ・シューと名づけた。
基本材料:水、バター、塩、小麦粉、卵
折り込みパイ生地 pâte feuilletée
小麦粉で作った生地で、バターをかたまりごと包み、3つ折りを6回くりかえすと、生地とバターの層が1000近くできあがる。この生地は、菓子の修業に出されていたクロード・ジュレ(後に画家になる)が、生地にバターを入れ忘れ、あとで加えてできた偶然の産物だ。
基本材料:小麦粉、塩、バター、冷水
サブレ生地 pâte sablée/ シュクレ生地 pâte sucrée
共にタルトの台などに使われるクッキーのような食感の生地。日本では区別せずにタルト生地とも呼ばれている。シュクレ生地よりもサブレ生地の方が、バターの分量が若干多めでよりサクサクしている。
基本材料:バター、砂糖、卵、小麦粉