パリからRERに40分乗り、それから今度は車で走ること10分。セーヌ・エ・マルヌ県のカンシーボワザン市に住むサンドリーヌさん一家を訪れた。パリから1時間離れただけで、ゴッホが描いた「収穫」のような光景が、あたり一面にみられる。 サンドリーヌさんは高校生の時から両親とパリ暮らし。結婚してからも、メトロまで1分、近くには商店が立ち並ぶ、とても便利なアパルトマンに暮らしていた。長男のジェレミ君が生まれてから、今まで以上にパリの大気汚染が気になってしまったこと、手狭になったこと、何よりもストレス一杯のパリの生活にピリオドを打ちたいと、パリ脱出を決意。インターネットで不動産情報を検索し、今の家を見つけた。 彼らが物件を訪問した日、教えてもらった道順通りに進んだが、なかなか目的地にたどりつかない。「こんなに遠いの?」と、夫のフィリップさんと少々呆れ気味だったとか。しかし、建てられたばかりの真新しい家、それに何よりも250m2もある庭の先には隣家もなく、どこまでも広がる畑が見えるだけ。パリのアパルトマン暮らしでは、絶対味わえないこの光景をみた時に、この物件に決めたそうだ。 家に入ると、高い天井の明るく、広いサロンに通された。サンドリーヌさんへのプレゼントの着物が、白い壁にはえて、大きなアクセントとなっている。パリのアパルトマンでは、隣人に気を使い、なかなか出番のなかったフィリップさんのピアノも、ここでは心配ない。サロンは、家族が集うお気に入りの空間だ。 この家で唯一気に入らない点は、戸棚・押入れが少ないことだそうだ。がしかし、2階の踊り場で上に続く階段を発見! 総面積にカウントされない屋根裏部屋約50m2が、物置として使われていた。なんとも、羨ましいかぎりである。子供部屋では、もうすぐできる妹のために、ジェレミ君が、嬉しそうに模様替えのお手伝いをしていた。 「この家に住んだ後では、パリのアパルトマン暮らしは、考えられないわ」というサンドリーヌさんの言葉にうなずきながら、うさぎ小屋のわが家へと帰ったのだった。(下) |
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Val d’Europe
「サンドリーヌさん一家は、一体どこで買い物するのだろう?」と心配になるほど、まわりには何もなかった。「心配しないで」と、連れて行ってくれたのは、RER A線の駅に隣接する巨大なショッピングセンター〈Val d’Europe〉。 |