水も、さまざま…。
「水は、のどの渇きを本当にいやしてくれる唯一の飲み物である故に、わずかしか飲用できない」とブリヤ・サヴァランは、名著『美味礼賛』の中で書いているが、ワインの国フランスでは、この断言はあまり意表をつくものではない。
長い間、天然のミネラルウオーター “eaux minerales naturelles”は、第一に治療用として考えられ、1953年まで薬局で売られ、それを飲むには医師の処方箋が必要だった。それぞれの特性を持つミネラルウオーターと、その水が湧き出ている温泉町は切っても切れない関係にあった。肝臓が悪いとヴィシーに出かけ、リュウマチに苦しむと、ブルボン・ランシーに出かけた。
フランスでの温泉療法は、少なくともローマ時代にまでさかのぼる。地下水は、地表の水に比べ、ガスやミネラル分を含んでいたり、温度が異常に高かったりして、治療の効果大とされ、評判が高かった。しかし、治療効果に関する基準は曖昧で、18世紀から19世紀初めにかけて、大量の「新しい泉」が生まれることになるが、1823年に王令が公布され、天然のミネラルウオーターは、民衆に飲用される前に管轄省の許可が必要となり、専門家の検査を受けなければならなくなった。
現在広く出回っているミネラルウオーターも、治療用の特性を保持し、医師は、病気によっては薬として処方している。それとは逆に、ヴィシー・セレスタン、サン・ティオール、エパール、アルヴィなどのミネラルウオーターは、マグネシウムやカルシウムを大量に含有しているため、病気によっては飲料を控えるようにと、表記されている。
“泉の水 eaux minerales naturelles” も地下水で、汚染から守られ、いっさいの化学的処理を禁止されているが、ミネラルウオーターと異なり、県当局の許可だけで開発できる。治療効果はないが、値段が安く、最近では、まずい水道水から背を向けた市民に愛飲されるようになってきた。 「水」クイズ。
日本語には、「水を向ける」、「水を打ったようだ」、「水くさい」、「水に流す」、「水をさす」などの表現があるけれど、もちろんフランスにも水を使っ
た言い回しが数多くある。日本語ではどんな意味にあたるのか、知恵を絞ってみよう。
1. C’est comme un coup d’épée dans l’eau.
2. Claire comme de l’eau de roche
3. Comme une goutte d’eau dans l’océan
4. Heureux comme un poisson dans l’eau
5. Il y a de l’eau dans le gaz.
6. J’en ai l’eau à la bouche.
7. Mettre de l’eau dans son vin
8. Nager entre deux eaux
9. Pecher en eau trouble
10. Se jeter à l’eau
11. Il faut se méfier de l’eau qui dort.
12. Etre comme l’eau et le fer
13. Se noyer dans un verre d’eau
14. Il faut laisser couler l’eau.
A. 思い切った決断をする。
B. 焼け石に水。
C. のどから手が出るほどほしい。
D. 混乱に乗じて利益を得る。漁夫の利を得る。
E. とるにたりないことで苦労する。
F. 水と油のごとく合わない。犬猿の仲。
G. おとなしい奴こそ油断がならない。
H. 水を得た魚のようだ。
I. 無用な試み。ぬかに釘。
J. どっちつかずで上手に世渡りする。
K. ひともめしそうだ。
L. なりゆきにまかせるしかない。
M. 態度を和らげる。控えめになる。
N. 澄んでいて一目瞭然である。 答えは最後のページに