パリは映画が大好き…

フランス映画の現状について
クラピッシュ監督にインタビュー。

2001年のフランス映画は、製作費、公開作品数、観客数ともに大幅に増え、国内外で高い評価を受けた。だがその一方でジャン=マリ・メシエ氏率いるヴィヴェンディによるカナルプリュス買収は、フランス映画界に押し寄せる文化のグローバリゼーションの表れとされ、不安が表面化。そこで、インディーズとメジャーとの垣根を無効にしながら快進を続けるセドリック・クラピッシュ監督に、現在大きなうねりの中にあるフランス映画について意見を伺った。

2001年度、フランス映画はとても元気がありました。あなたの仕事の上で直接どんな影響がありましたか?
大ヒットした『La verite si je mensパリ原色大図鑑』とその続編を製作したプロダクションが僕の新作を製作している。だから資金調達がスムーズにいったという意味で恩恵を受けた。70年代まで素晴らしかったイタリア映画も今は壊滅的な状況だし、イギリスも日本も、監督にとって不安定な状況にある。それに比べフランスは、フィリップ・ガレルからアラン・シャバまで様々なスタイルが混合しながらも、アメリカ映画の侵略に対しよく健闘しているから恵まれている方だ。

このフランス映画の隆盛は中身の伴ったものだったと考えますか?
現在フランス映画が国内外で盛り上がっているからといって、今が一番素晴らしい映画を産出しているとは思わない。ただフランス映画界は、長い間インテリ
層が中心を占めエリート意識も強かったから、ある監督たちには大衆的な大作を手掛けることへのためらいもあった。だがマルチコンプレックスの映画館が新し
い観客層を生み出し、『Le gout des autres ムッシュ・カステラの恋』、『Le Pacte des loups ジェヴォーダンの獣』、『Asterix et Obelix』などバラエティーに富んだ作品が多く製作された。これも必要な流れのひとつだったと思う。

UGCやゴーモンなどによる大型映画チェーンによるパス(映画定期券)についてはどう思われますか?
僕は映画の入場料を下げることに対しては基本的に賛成だ。だが映画はコマーシャルな商品であると同時に文化でもあり、映画パスの台頭は、映画を消費するという視点だけに偏りすぎて考えているのが問題なのだ。

2年前パトリス・ルコント監督と批評家の間で論争が起こった時に、あなたは「批評というのは論証することだが、リベラシオン紙はそれをしていない」と答え、ルコント氏を擁護しました。今も批評家に対しては同じ考えをお持ちですか?
自分の仕事に対しての自己批評を回避するフランスの批評家よりも、監督たちの方がよっぽど自己批評の精神を持っている。フランスの批評は70年代にくらべるとレベルが落ちているのは確かだ。

先日「フランスの文化的な特色は消えるだろう」と語ったメシエ氏の爆弾発言について監督としての心境は?
彼の発言が間違っていることを願っている。これはナショナリズムからではなく国際人としての立場から言いたいのだが、フランスが独自の文化を守ろうとす
るように、ロシアも日本も、それぞれ守るべき文化を持っている。母国語で作品を作ることは大切なことだろう。それにフランスはロシアやアフリカ諸国などの
映画製作を助ける数少ない国だから、フランス映画だけを守っているわけではないのだ。
(聞き手:林瑞絵)

フランスはロシアやアフリカ諸国の映画製作を助ける数少ない国で、フランス映画だけを守っているわけではない。


今年の6月公開予定の新作 『L’Auberge Espagnole』 Photo:Jerome PLOM


セドリック・クラピッシュ
Cedric KLAPISCH

1961年パリ生れ。NY大学映画学科で学ぶ。
監督作は『Rien du tout 百貨店大百科』(’92)
『Le Peril jeune 青春シンドローム』(’94)
『Un Air de famille 家族の気分』(’96)
『Chacun cherche son chat 猫が行方不明』(’96 )
『Peut-être パリの確率』(’99)など。

 


クラッピシュによるフランス映画ベスト3
3 coups de coeur de Klapisch

『La Regle du jeu ゲームの規則』ジャン・ルノワール監督作品(’39年)
『Le Quai des brumes 霧の波止場』マルセル・カルネ監督作品(’38年)
『Les Valseuses バルスーズ』ベルトラン・ブリエ監督作品(’74年)


La Regle du jeu
クラピッシュ監督の新作情報

『L’Auberge Espagnole』(2002年6月19日公開)
主演:オドレイ・トトゥ、ロマン・ドュリス。フランス人学生たちが学業を終えるためにスペインのバルセロナで過ごす。若者を通したヨーロッパのポートレイト。『青春シンドローム』、『猫が行方不明』に近い雰囲気となる予定。

『Ni pour ni contre, bien au contraire』(2003年1月公開予定)主演:マリー・ジラン、ヴァンサン・エルバーズ。クラピッシュが初めてジャンル映画に挑戦。ドラマチックでコミカルなギャング映画になる予定。矛盾に満ちた不可思議なタイトルはユーモアと哲学が混合した禅門答から影響を受けたものだとか。

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