建築家の心を持つ写真。 Lucien Herve 展

 「建築家の心を持つ」写真家としてル・コルビュジエから信頼を得、彼の作品を初め、多くの建築写真を撮影してきた、現在91歳のルシアン・エルヴェの代表作180点。こんなに美しい建築写真がほかにあるだろうか?
 リュシアン・エルヴェは、1910年ハンガリーのユダヤ人家庭に生まれる(本名Laszlo Elkan) 。1929年にパリへ移住。銀行員やオートクチュールのモデリストとして働いたのち、雑誌の記者兼カメラマンとなる。戦前は労働組合や共産党で活発に活動していたが、戦時中は収容所に送られる。だが脱走し、レジスタンスとしてリュシアン・エルヴェの名でパリへ戻り、解放の日を迎えた。
 彼の写真家としての人生は戦後に始まる。1949年のある日、ヴァンスのロザリオ礼拝堂の装飾をマティスに依頼したクチュリエ神父と出合い、神父の勧めでル・コルビュジエが建設中のマルセイユの集合住宅の工事現場を撮影することになる。1日で650カットを撮影し、その写真を見たル・コルビュジエは直ちに彼とのコラボレーションを決めた。それはル・コルビュジエが亡くなる1965年まで続いている。
 エルヴェの写真の特徴は、そのフレーミングといえるだろう。建築写真は一般的に、パースの歪みが補正できる大形カメラと広角レンズで出来るだけ建物の全体を捉えようとする。が、エルヴェは中型カメラでフットワークも軽く、建物の様々な箇所をクローズアップで部分的に抜き取る。直感的に抜き出した部分と彼の画面構成は、実は建築家のコンセプトの本質を表しているのである。
 ピエール・ルイジ・ナルヴィ、丹下健三、オスカー・ニメイヤーなど、多くの現代建築家がエルヴェに撮影を依頼してきたが、その一方、彼は中世の修道院、中東の遺跡なども、一貫したアプローチの仕方で撮影してきた。エルヴェの写真には、妥協なく構築した彼の世界観が感じられる。そしてそれは、人間が創り出したフォルムを記録しつつも、その形体の中にある、時間軸や性質を超越した人間の精神の普遍性をも写し出そうとしているかのようだ。(仙)


3/17日迄(月休)

*Hotel de Sully: 62 rue Saint-Antoine 4e


L’Art de la Plume en Amazonie
 ほの暗い展示室に入ると、アマゾンのインディオたちが作った羽飾りの鮮やかな色に衝撃を受ける。ジャングルに住む彼らには欠かせない材料、鳥の羽を用いた装身具をおよそ150点集めた展覧会。
 「頭の家」と呼ばれる大きな王冠、仮面、首飾り、イヤリング、鼻飾り、ほとんどは祭儀用である。各部族ごとに色や形の様式を持ち、明確な美意識でデザインされている。それは一緒に展示されている「様式無し」の外国人用のものに比べれば一目瞭然だ。
 縛ったり張ったりと複雑な技術で加工されたこれらの羽は、狩りで捕った鳥から、あるいは飼育した鳥から採取される。抜くというもの。その狩猟道具には羽が傷つかないような工夫がされている。また、羽の色は自然の色だけではなく、後から染めたもの、そして鳥が生きている時に何かしらの方法で色を変化させたものもある。これら発達した技術をみると、羽飾りがどれだけ彼らにとって重要な位置を占めていたかがうかがえる。
 羽と一緒に使われた材料も、植物の種、貝殻、猿の歯や骨、ヤマアラシの刺、髪の毛、黄金虫、鳥のくちばし、丸ごとの小鳥など様々。ガラスケースの中でしっかりと照明を浴び、あらゆる角度から観察できるようにうまく展示されたこれらの芸術品には、発見と驚きがぎっしりと詰っている。混雑する土曜の午後は避け、平日にゆっくりと訪れたい。(ヤン)

*Mona Bismark Foundation: 34 av. de New York 16e 3/30日迄(日月祝休)


●Oscar Niemeyer(1907-)
ブラジルの未来的な首都ブラジリア開発のコーディネーターで、パリでは19区にある共産党本部ビルのデザインで親しまれているブラジル出身の建築家オスカー・ニメイヤー。有機的な曲線を縦横に駆使した抽象的で官能的ともいえる建築作品。3/31迄
Galerie nationale du Jeu de Paume :
1 place de la Concorde 8e (月 休)

●Henri MATISSE / Ellsworth KELLY
アンリ・マティスとアメリカ人抽象画家エルスウォース・ケリーによる花の絵。春の到来が待ち遠しい。4/8迄
ポンピドゥ・センター(火休)

●<Instants choisis des XIXe et XXe siecles>
アングル、ドラクロワ、クールベ、セザンヌ、マネ、マティス、バルチュス他、19世紀、20世紀の画家たちの水彩、パステル、デッサン。4/12迄
Galerie Schmit : 396 rue St-Honore1er

●Stephane DUROY
ロレーヌやドゥオモンの戦場、ベルリンの壁、強制収容所…。20世紀の二つの大戦が残した醜い傷跡の上に、現在のヨーロッパは築き上げられている。報道写真家デュロワの写真とドキュメンタリーフィルム。4/14迄
Maison europeenne de la Photographie :
5-7 rue de Fourcy 4e (月火休)

●<Italia Antiqua>
ローマ大賞を授賞してイタリアに留学した、19世紀と20世紀のフランス人建築家たちのデッサン約100点。4/21迄
Ecole nationale superieure des Beaux-Arts : 13 quai Malaquais 6e(月 休)

●<Toulouse-Lautrec et l’Affiche>
ロートレックのポスターを一堂に集める。5/6迄(火休)
Musee Maillol : 61 rue de Grenelle 7e

●Jochen GERZ(1940-)

ベルリン生まれ。70年代からコンセプチュアルな作品を発表してきたヨッヘン・ゲルツ。70年代から現在まで、パフォーマンスを中心とする作品をビデオで展示する。4/22迄

ポンピドゥ・センター(火休)

●Theodore CHASSERIAU(1819-56)

アングルを師とし、ドラクロワと同時代を生きた、フランスロマン主義を代表する画家の一人。色彩と東洋的主題に資質を示す。5/27迄

グランパレ(火休)

●<Afghanistan, une histoire militaire>

イスラム文化を中心にギリシャ、インド、モンゴルなど、様々な民族と文化が交錯していたアフガニスタンの美術品250点を展示。5/27迄

ギメ美術館 : 6 pl. d’Iena 16e(火休)