SUSPENDU AUX LEVRES
“être suspendu aux lèvres de quelqu’un”
(誰かの唇にぶら下がる)というのは、その人の言うことに熱心に耳を傾けること。”boire ses paroles”(言葉を飲む)も同じ意味です。「言葉を飲む」のように液体がからんだ喩えには “un flot de paroles”(言葉の波→とどまるところをしらないおしゃべり)というのもあります。こんな風におしゃべりな人は、”souler avec son beau discours”(うまい話で酔わせてしまう)といいますが、ほどほどに酔わせてもらいたいものです。
フランス語には “pot” がたくさんあります。”pot de fleurs”(植木鉢)、”pot de yaourt”(ヨーグルトの瓶)、”pot-au-feu” (ポトフ)、”poule au pot”(めん鶏入りのポトフ)、”decouvrir le pot aux roses”(秘密をあばく)、” payer les pots casses”(尻ぬぐいをする、とばっちりを食う)、”pot d’echappement”(自動車のマフラー)、”pot de colle”(にかわ壺→しつこい人)、”pot-de-vin”(わいろ)、”pot de peinture”(絵の具入りの瓶→厚化粧の人)、”pot pourri”(ごちゃまぜ)…。”pot”
には「飲み物」や「チャンス」という意味もあり、”prendre un pot”(一杯飲む)、”avoir du pot”(チャンスにめぐまれる)などと使われます。”pot de chambre”(し瓶、おまる)も忘れられません。”sourd comme un pot” (壺や瓶のごとく耳が聞こえない)という表現もありますが、幸いなことにこの “pot”がどれに当たるのかは、私たちの想像の自由にまかされています。
「耳が不自由? そう…でも、匂いは感じるんだ」
“t’es tombé du lit, ce matin !”(今朝は、ベッドから落ちたのかい!)などと言われたことがあったとしたら、あなたは早起きでないか、少なくとも朝ねぼうで通っているということです。ご察しのように “être tombé du lit”というのは、ふだんよりずっと早く起きてしまうという意味です。フランス語のコジツケ表現にはありとあらゆる落ち方があります。なかでもいちばん思いがけないのは “tomber sur quelqu’un”(誰かの上に落ちる→思いがけなく誰かに出会う)。ほかにも “mal tomber”(まずく落ちる)、”bien tomber”(うまく落ちる)などがありますが、これは単に「タイミングが悪い」、「タイミングがいい」という意味。”ne laisser jamais tomber” (決してあきらめない)ことが大切です。最終的には”retomber sur vos pattes”(自分の足の上に落ちる→窮地を脱する)ことができるのですから。
“nez”も俗語にはよく登場し、鼻の形を形容する言い回しもいくつか見つけることができます。いちばんポピュラーなのは “nez en trompette”(trompette=トランペット=>先がツンと上を向いた鼻)。ほかにも “nez en pied de marmite”(pied de marmite=大鍋の脚=>横に広がり、かなり丸い鼻)、”nez a boire au baril”(樽から飲む鼻=>平たくつぶれた鼻)、あるいは”nez de pompettes”(ほろ酔い鼻=>酔っぱらい特有の赤い鼻)…。