航空券現金払いが災い。

 1992年から95年にかけて、当時パリ市長だったシラク現大統領が、”ベルノラン”、”ピエラック”とかの偽名を使って、私用の旅行費(夫人と娘のクロード嬢も便乗)や側近の航空券・ホテル代など総額240万フランをヌイイの旅行代理店に現金で決済! そしてその金額を払うのに、500Fの札束の入った茶封筒をおかかえの運転手に運ばせたことが、旅行代理店店主や同運転手、大統領秘書らの証言で6月以来明るみに。そのヘソクリの出所に予審判事らの嫌疑が及ぶ。
 1977年から95年まで、シラク・パリ市長兼RPR(共和国連合)総裁時代に遡る裏資金疑惑から市職員の架空雇用、イル・ド・フランスの公営団地建設業界との収賄疑惑まで汚職疑惑は数えきれない。3人の予審判事は、大統領の免責特権*という鎧で身を守るシラク大統領の証人としての事情聴取が不可能ならと、NY、東京へと92年~95年に20回ほど父親と旅した現大統領広報顧問クロード嬢(38)を7月11日に証人喚問。ベルナデット・シラク夫人にもこの旅行費についての事情聴取となればエリゼ宮の醜聞となりかねない。
 おりしも7月3日、ダンティラック・パリ検事は、昨年刑法改正で導入された”保佐人付き証人t士oin assist”(単なる証人以上の権利を有し刑法上の責任は問われない) としてなら、予審判事は大統領から事情聴取できるという見解を発表。が、ナダル検事総長はこの見解に反対し、大統領に関するいかなる法的手続きに対しても破棄院にかけて是非を問うと、パリ検事と検事総長が正面衝突。
 ”公金の私用”とメディアにスキャンダル扱いされたシラク大統領は、7月14日のインタビューでも持論を崩さず、現金240万フランは、彼が首相時代(1986~88)に受けた特別資金から出たもので、実際はその半分と主張する。が、92年~95年には、彼はすでに首相ではなかったはず。
 特別資金とは、毎年議会が可決し会計監査を通さない”機密”資金ともいわれ、約4億フランにのぼる。その6割は対外治安局に、残りは大統領と首相及び各省に分配される。大統領や首相、大臣たちは同資金から特別顧問や協力者に無申告で手当を払うそう。シラク大統領の弁明によれば、首相時代の自分の取り分を暖めておき私用の航空券に代えたということか。
 一方、右派3野党の総裁たちは、次期大統領選挙運動にジョスパン首相がこの資金を利用するのではと警戒し、同資金の凍結を提案。首相は「大統領、首相の職務を凍結させるのか」と一喝。歴代の大統領、首相らが便宜だててきたこの特別資金もそろそろ透明化が迫られそう。
 シラク大統領の私的航空券問題は、76年ジスカール・デスタン元大統領が中央アフリカ共和国の故ボカサ大統領から贈られたダイヤモンド疑惑に匹敵するといえる。政党の裏資金や収賄疑惑は庶民には無関係の噂くらいにしか響かないが、元首の私的航空券やダイヤとなると国民は敏感になるものだ。大統領は法に対し免責特権があっても、選挙という国民の審判からは逃れられないのでは。(君)


シラク大統領の航空券疑惑について

71% 大統領のイメージは不変
23% イメージが少し低下
64% 大統領の証人喚問に賛成
61% 親族の証人喚問に賛成
*BVAの7/7日付アンケート(Le Monde 7/10)

*高等法院が裁く大反逆罪を除き大統領は職務上の責任を負わない。6/19日、国民議会は任期中でも就任前・任期中の違法行為を通常の裁判所が裁けるようにする免責廃止法案可決。10月に上院審議。