新世紀初のカンヌ映画祭。

 南仏の青空、浜辺にはトップレス、フラッシュの嵐、騒々しく殺気だった関係者と地元住民、そして堂々の作家映画と大スターが集結する映画祭… 。
今年初めて、私の母親でも知っている世界一有名な映画祭に陣地入りしてみたのだが…。天気は曇りがち、華やかさに拍車を掛けていたスポンサーのロレアル軍団&カナルプリュスの生中継も影をひそめ、かわりに『Loft Story』なるテレビ番組が話題を席巻。今年のカンヌの流行語大賞は「いつもより人が少ないね…」。予想を裏切らず存在していたのは、堂々の階級社会とトップレスくらいか。
肝心の映画の方も、良質だがどこか迫力に欠ける作品が並ぶ。特に今年は “家族” をテーマにした作品が多かったせいかもしれない。パルムドールを獲得のナンニ ・モレッティ『La Chambre du fils』を始め、マルク・レチャ、ツァイ・ミンリャン、マノエル・デ・オリヴェイラ、青山真治、是枝裕和…。やたらと “家族の死” が絡むのも特徴。作家の視線は内的、回顧的なものへ向かうのだ。
新世紀最初の映画祭ではあるが、映画は完成まで時間がかかるから、前世紀末の清算の気分が、時間差で世紀を越えようやく形になったのかもしれない。
さて、そんな似かよったテーマの作品が並ぶ中、物語の解体に皆を巻き込む確信犯的作家、諏訪敦彦の『H story』(「ある視点」部門出品)が、新鮮な空気を吸わせてくれたのだった。でもこちらは出演も果たしている(吉)さんに次号での解説を期待するとして、今回はコンぺ作の中から特に現在劇場公開中の2作品を紹介したい。
www.festival-cannes.org

 


パルムドールを受賞のナンニ・モレッティ監督。
●Roberto Succo
実在の殺人犯がモデルとなっており、「芸術の名のもとでの殺人の宣伝は反対!」と警察がデモ、実際に2都市で上映禁止の憂き目にあってしまった、俊英セドリック・カーン入魂の最新作。
イタリア語訛りの要注意人物ロベルトが、フランスに流れ、重罪を重ね、やがて捕まるまでを描く。ロベルトへの共感の三段階:@誰もが共感できる部分(性的不能への苛立ち、彼女に拒絶され歩きだす後ろ姿…)A半分くらいは共感でき
る部分(屋根の上での大演説…)B全く共感できない部分(犯罪に対する罪悪感の欠如…)をバランスよく刺激しつつ、どの瞬間もあくまでロベルトその人であることに感嘆。彼の動物的な青い眼光が脳裏に焼き付く。

 

●La Chambre du fils
そして避けて通れないのがパルムドール受賞の本作。昨年コンペ部門への出品が一本もなく、不振の烙印を押されかけていたイタリアから、いきなりNo.1映画が飛び出した。

愛すべき、出たがり監督モレッティが、事故で最愛の息子を失った父親役で今回もやはり主演。繊細で優しい再生の物語の受賞に、観客、批評家以下一様に満足そう。

だがちょっと待ってくれ。思えば去年と一昨年は賛否両論を引き起こした『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、『ロゼッタ』がパルムドール。自分は個人的に両方とも嫌いな作品だが、逆に擁護派の人の意見に耳を傾けるのは「いい映画ってなんぞや?」と考えさせられ刺激になった。それに対して『La Chambre du fils』は、120%良質のホームドラマ的味わい。みんな「いい映画だね」と口を揃えて一様にご納得で議論の余地なし。それはなんだか、皆がそこそこ平均的に楽しめる作品ばかりで、挑戦的な姿勢に欠けた「2001年度カンヌ映画祭」を象徴するパルムドールに見えてしまうのだ。(瑞)


 

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